認知症講演会 鳥取県の認知症予防策を紹介

公開日 2023年11月10日

 地域医療部は10月23日、浦上克哉氏(鳥取大学医学部保健学科教授)を講師に、認知症講演会「疾患修飾薬を見据えた認知症予防 ~とっとり方式認知症予防プログラムの紹介~」を協会セミナールームで開催し、会場とZoom合わせて28人が参加した。

認知症は世界的な課題

 世界での認知症の患者数は2015年時点で4680万人であり、さらに20年ごとに倍増していくと、国際アルツハイマー病協会は推計している。このように認知症は世界的な課題であり、世界保健機関(WHO)は2019年に「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表した。厚生労働省の研究班は、日本における認知症の患者数が2025年に約700万人(65歳以上の5人に1人)にのぼると推計している。さらに、対面での会話や外出等を控えるといったコロナ禍での「新しい生活様式」は、認知機能の悪化をもたらしており、認知症の患者数がいっそう増加することが懸念される。

認知症の予防

 認知症の「共生」と「予防」は両輪であり、2023年の通常国会で成立した認知症基本法には、認知症の予防等を推進することが盛り込まれた。

 認知症のうち、約20%は脳梗塞や脳出血等による血管性認知症だ。その危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症等、生活習慣に起因するものが多く、バランスの良い食事や運動等、適切な対策で予防が可能だ。また、アミロイドβは、睡眠中に除去されることから、良い睡眠はアルツハイマー型認知症の予防にもなり得る。補聴器を早めに着用するのも効果的だ。

 2023年9月、厚生労働省は、疾患修飾薬であるレカネマブの製造・販売を承認した。従来の治療薬が症状の進行を抑制するのに対し、疾患修飾薬は病気の進行そのものを抑制する。しかし、レカネマブの投与対象者は、軽度認知障害(MCI)と軽度のアルツハイマー型認知症に限られ、さらにMCIの中でも投与対象にならない場合が多いと想定される。

 手軽に実践できて効果がある方法として、浦上氏らが開発・研究し、鳥取県内の自治体を中心に普及している「とっとり方式認知症予防プログラム」を紹介した。このプログラムは、運動と知的活動を2本柱とし、コミュニケーションと座学(正しい認知症予防の知識等)を組み合わせて継続的に実施するものだ。プログラムの参加者には、認知機能の改善や身体機能の向上が見られた。

 浦上氏は、地域で認知症の予防に取り組む重要性とともに、「ぜひ患者の認知症を予防する視点を持って日常の診療に臨んでほしい」と期待を寄せた。

(『東京保険医新聞』2023年11月5日号掲載)