アスベスト研究会「肺の病理と臨床診断――講師と共に胸部XPを読影」

公開日 2016年11月10日

アスベスト研究会2016

 建設関係の労働者を中心に、アスベストのばく露によって、2000年から2039年の40年間で中皮腫による死亡者が10万人にも及ぶとの試算もある。
 日常診療のなかで、増加する石綿肺関連疾患への対応が求められていることから、協会公害環境対策部は9月26日、職業性疾患・疫学リサーチセンター理事長の海老原勇先生を招きアスベスト肺関連疾患の研究会を開催、31人が参加した。

 石綿肺関連疾患は間質性肺炎との鑑別診断が困難であり、また、石綿ばく露によってのみ発生するといわれる胸膜肥厚斑の読影も難しい。そのことから、健診や日常診療で出会っているにも関わらず見逃され、労災適用にも結びついていないという現実がある。

 講師は石綿肺の診断について「組織中の石綿小体の有無や胸膜変化が重要であるが、石綿小体や胸膜変化を認めない例も存在しており、びまん性肺繊維化や間質性肺炎でも石綿ばく露があれば『石綿肺』と診断される」ことを、剖検で自ら作成した「肺切片」の標本などを示し解説した。
 胸膜肥厚斑の有無により、建設労働者の肺がん発生率は6倍にも跳ね上がる。また、石綿ばく露の早期でも胸膜の変化が生じることもある。したがって、健診などでは職歴の確認や胸膜肥厚斑などを見落とさないことが求められている。後半の胸部XPの読影では、見つけにくい胸膜肥厚斑や塵肺の所見について、講師と参加者が熱心に意見を交わした。

(『東京保険医新聞』2016年10月15日号掲載)