[主張]診療報酬の大幅引き上げを求める

公開日 2023年10月10日

コロナ特例の復活・延長を

 厚労省は9月15日、診療報酬・公費負担のコロナ特例を10月1日から変更することを発表した。

 コロナ患者(疑い含む)を感染予防策を講じて診療した場合や、入院調整を行った場合、療養上の指導を実施した場合など、従来の点数の大幅な引き下げ・廃止が行われ、名称や請求コードも再編された。

 また、これまで公費負担とされていたコロナ治療薬についても、10月1日以降、医療保険に基づく窓口負担が求められることとなった。

 新型コロナウイルスの感染力は依然として非常に強力である。現在国内での流行が第9波を迎え、多くの死者・重症者を出しているほ、罹患後症状や後遺症に苦しむ人も多い。

 5月8日の5類化後も、医療機関ではそれまでと変わらない院内感染防止対策、PCR検査、新型コロナワクチン接種、自宅療養者の診療等が日常診療に加えて求められている。これらにかかる技術や労力、費用が診療報酬において適正に評価されているとは言い難い。

 また、公費負担の範囲が縮小されることによって、患者の受診抑制がさらに加速することも懸念される。

 医療機関が持続的に十分な診療を行うためには、コロナ特例の復活・延長が必要だ。

基本診療料大幅引き上げは待ったなし

 そもそも、診療報酬は2002年以降、累計で10%以上引き下げられ、中でも初・再診料等は低く抑えられてきた。

 加えて、2023年7月の消費者物価指数は3・3%、国内企業物価指数は3・6%上昇している(前年同月比)。コロナ禍や、物価高騰等より医療機関の経営も大きな影響を受けているが、診療報酬は公定価格であるため高騰分を価格転嫁することはできない。

 8月24日の社会保障審議会(医療保険部会)での2024年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論でも、物価高騰の影響をふまえた対応や、入院時食事療養費の大幅引き上げ、支え手が減少する中での人材確保の観点から、医療従事者の賃上げを実現するための手当てなどを求める意見が出ている。

 医療機関を維持・存続させるためには、基本診療料(初・再診料、外来診療料、入院基本料等)の十分な引き上げが必要不可欠である。

 一方、貧困や物価高騰のみならず、保険料と医療費の窓口負担の引き上げにより、必要な医療サービスを受けられない住民が多く存在している。国が予算を確保し患者負担の軽減をはかることが急務である。

診療報酬引き上げ求める会員署名にご協力を

 協会では、「国民に安全な医療を提供するため、基本診療料を10%以上引き上げること」「必要な医療が受けられるよう、患者窓口負担を軽減すること」の2点を求める会員署名に取り組んでいる。ぜひご協力いただきたい。

 持続可能な医療提供体制を構築するために、保険医の力を結集して診療報酬の引き上げを実現しよう。

(『東京保険医新聞』2023年10月5日号掲載)