保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

医療事故調研究会を開催 制度の運用に注意必要

公開日 2016年01月25日

11月26日、協会勤務医委員会・病院有床診部は「医療事故調運用ガイドライン―医師法21条正論と報告書の非識別加工」をテーマに研究会を開催した。講師に佐藤一樹先生(いつき会ハートクリニック院長・略歴参照)を招き、44人が参加した。

 佐藤先生は冒頭「本制度は法律上、医療事故の再発防止だけを目的としている」、「医師法21条における異状死体の警察届出とは全く無関係の制度である」と強調した。また、医療事故が起こった場合に最も重要なのは、「制度の外で行われる遺族への説明などの誠意ある対応がまず必要であって、制度への対応に振り回されることがあってはならない」と述べた。

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 一方で、本制度を医療訴訟などに利用したいと考える人もおり、制度上も付け入る隙が残されている。佐藤先生は、事故調査支援センターとなった「日本医療安全調査機構」の常務理事が示した資料等を紹介しつつ、「これまで機構は、医療安全のためのシステムエラーの分析を行った実績はない。むしろ責任追及型の医療行為の評価を中心に調査分析を実施してきた」と指摘した。医療行為の評価は“誰にどの程度の責任があるのか”ということであり、訴訟につながりかねない」と指摘、制度のなかに落とし穴があることに注意を促した。

 本制度は、医療機関の管理者が「予期しなかった死亡・死産かつ、提供した医療に起因するもの」と判断した時だけ、事故調査支援センターに報告をすることになる。死亡が予期されると1.患者・遺族に説明していた、2.診療録に記載していた、3.医療提供後でも事情聴取の結果、医療従事者が予期していたことを管理者が確認した場合は事故調査支援センターへの報告は不要である。

 閉会挨拶に立った拝殿清名会長は、「協会勤務医委員会はじめ多くの医療関係者の働きかけによって、医療事故調査制度は医療安全を目的にした制度として発足した。しかし、目的外の責任追及に使われるならば医療崩壊をもたらすものにもなる」と強い懸念を表明し、引き続き制度の運用を監視していくことが重要だと指摘した。

〈講師略歴〉
・2014度厚労科学研究「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班」構成員
・日本医療法人協会「現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会」委員

(『東京保険医新聞』2016年1月25日号掲載)