保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

指導・監査問題研究会 指導における保険医の権利とは――時代遅れの健保法を考える

公開日 2016年01月25日

協会は1月9日、保険医への指導監査問題について取り組んでいる柿崎弘行弁護士を招き、指導監査問題研究会を開催し、38人が参加。健康保険法における法的な問題点についての理解を深めた。

柿崎氏はまず健康保険法制定当時からの沿革を紹介した。第二次大戦中の1942年に、保険医の指定について行政官庁が強制的に指定する仕組みが導入されたが、戦後の1948年に任意の制度に変更されたことや、取消処分や監査の根拠規定、取消事由が定められた経緯を述べた。

続いて他法にみられない健康保険法の特殊な構造的問題として、「立法機関と執行機関の同一性」と「実体法と手続法の未分化」を指摘。前者の問題点は、厚労大臣が保険診療のルールの制定・改廃を自由に行うとともに、その違反を自ら摘発して制裁を加えることができること。後者は、厚労大臣が、調査に協力しない者に対して、保険診療のルール違反があった場合と同一の制裁を自ら執行できることが問題だと解説した。

指導・監査問題研究会画像

次に各種通達の法的性質や実体法と手続法の区別について解説。実体法(保険医が遵守すべきルール)として療養担当規則と厚労省告示(診療報酬点数表)があり、これに加えて本来は保険医を拘束しない厚労省保険局医療課長通知(留意事項通知)も含めて点数表として出版・公開されている。

一方、手続法(厚生局が遵守すべきルール)として指導大綱、監査要綱、医療指導監査業務実施要領がある。この内、医療指導監査業務実施要領は公開されていない。柿崎氏は、保険医側に厳しく、一方で身内に甘い厚労省の態度を強く批判した。

また、健保法の条文を厳密に解釈すると、診療報酬の請求に関して保険医等が指導を受ける法的義務はなく、現状では監査と同様のことが指導の名の下に行われている問題点も指摘した。

参加者からは、「今後、健保法の問題を改善していくために弁護士側はどう考えているか」と質問があり、柿崎氏は「これまで指導監査問題はあまり触れられてこなかったが、取消処分や監査といった手続き上の問題から取り組んでいき、少しずつ療養担当規則や点数表などの実体法の問題に踏み込んでいきたい」と回答した。

協会では今後も指導監査問題ひいては健保法の問題改善に取り組んでいく。

(『東京保険医新聞』2016年1月25日号掲載)