保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

個人番号実務者講習会を開催 個人番号 空欄提出でも不利益ない/必ずしも1月時点で個人番号の収集必要なし

公開日 2015年12月25日

会場の様子画像

個人番号は11月中下旬になってようやく配達が始まったが、未だに届かない、不在等の差し戻し等が相次いでいる。また、個人番号をかたった特殊詐欺も相次ぐなど混乱も続き、1月から運用できる可能性は極めて低い。医療機関でも、高額なソフトや金庫を売り込まれた、税理士から「個人番号を書かないと税務調査に入られる」と根拠のない噂を聞かされたなど、不安になっている関係者も多い。

協会は11月12日に粕谷幸男税理士を招き、問題山積のマイナンバーについて講習会を実施、117人が参加した。

内閣官房「民間事業者における取扱いに関する質問」より

Q4-2-1 従業員などのマイナンバー(個人番号)は、いつまでに取得する必要がありますか?
A4-2-1 従業員にマイナンバーが通知されて以降マイナンバーの取得は可能ですが、マイナンバーを記載した法定調書などを行政機関などに提出する時までに取得すればよく、必ずしも平成28年1月のマイナンバーの利用開始に合わせて取得する必要はありません。例えば、給与所得の源泉徴収票であれば、平成28年1月の給与支払いから適用され、中途退職者を除き、平成29年1月末までに提出する源泉徴収票からマイナンバーを記載する必要があります。(2015年4月回答)

※ 下線・太字は協会。出典は【こちら

必ずしも1月時点で個人番号の収集必要なし

事業主が最初に個人番号の記入欄を目にするのは、年末調整のための「平成28年分扶養等控除申告書」であろう。今回から個人番号欄が新設されたが、年内に提出する際は空欄でまったく問題ない。

現在雇用している人の個人番号を記載する必要が出てくるのは、来年の年末調整・源泉徴収票作成時期(2016年末)であって、1月以降は入退職があった場合のみ、対象者の番号を収集するか否か、という問題になってくる。

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従業員から番号提供を拒否されたら空欄で提出

一度誰かの個人番号を預かると、事業主は「特定個人情報管理者」として安全管理措置を講じなければならない(基本方針の策定、取扱規程等の策定など6項目)。

では、安全管理措置は講じた、従業員にも使用目的を説明したが、肝心の従業員本人から提供を拒まれてしまった場合はどうするか。

番号法は、事業主には収集(努力)義務を課す一方、個人・従業員については何も規定していない。従業員が職場へ番号を申告する義務も、医師が執筆・講演をした際に出版社等へ番号提供する義務も、存在しないのである。

よって、役所へ提出する各書類の番号欄は空欄で提出して差し支えない。空欄であることを理由に、事業主や従業員本人が不利益に扱われることはない。

国税庁・厚労省のQ&Aには提供拒否された経過を記録しておくよう推奨しているが、粕谷税理士は「税法上、文書記録義務はないので、万が一聞かれたときに口頭で説明ができれば十分。心配であれば記録を」と呼びかけた。

参加者からは、「最近、従業員のなかにマイナンバーへの不安が募って、このままでは全員から提供を拒否されそうだ。全員分空欄で出したら、さすがに税務署の心象が悪くなるのではないか」との質問が寄せられたが、粕谷税理士は「たとえ全員が拒否をしても、それは一人ひとりの意思を尊重した結果で、不利益に扱われることはない」と回答した。

国税庁「国税分野におけるFAQ」より

Q2-3-2 申告書等に個人番号・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。
(答) 申告書や法定調書等の記載対象となっている方全てが個人番号・法人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号・法人番号を記載することはできませんので、個人番号・法人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。

※ 下線・太字は協会。出典は【こちら

源泉徴収票 本人交付用は番号を記載しない

源泉徴収票は、本人交付用には個人番号を記入しないこととされた。源泉徴収票を収入証明として銀行等へ提出する場合、番号漏えいが起こる可能性があるからだ。

この取り扱いについて粕谷税理士は、「本来、『控え』というのはそっくりそのままのコピーであるのが原則なのに、あえて抹消するというのは公文書のあり方としてどうなのか。それに、個人番号を預かった事業主が、本当に番号を記入して税務署へ提出したのか、本人交付用では確認できない」と取り扱いの矛盾を指摘した。

個人番号対応は「できる範囲内で」

そもそも、個人番号法に規定された事業主に対する個人番号の収集・管理はあくまで「努力」義務である。第6条には「(個人番号・法人番号の)施策に協力するよう努めるものとする」とあり、これについて粕谷税理士は「できる範囲内で協力していこうという趣旨で、事業所の規模に応じた対策をとればよい」と繰り返し強調した。

そして、「個人番号対策に労力を割きすぎて医療現場が混乱し、患者の治療に支障をきたすことがあっては本末転倒だ」とも述べた。

◇ ◇ ◇

個人番号は法律施行前からすでに改正法が成立して、今後健診情報や予防接種情報との紐付けが決まっている。また、将来的には患者情報との紐付けのみならず、医師免許証やクレジットカード、パスポートに生体認証、さらには東京オリンピックの会場入管規制まで、ワンカード化していく構想が進んでいる(IT総合戦略本部「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」)。

協会ではこの間、新聞・雑誌や各支部例会でもマイナンバー制度を取り上げ、実務だけでなく制度の問題点を指摘してきた。今後も1月以降の動向に注視して、正確な情報と実態に見合った対策について周知していく予定である。

(『東京保険医新聞』2015年12月25日号掲載)