医療保険改悪案めぐり国会緊迫 「患者申出療養」難病団体も反対

公開日 2015年05月25日

いのちまもるヒューマンチェーン会議の様子写真

今国会に提出されている「医療保険制度改革関連法案」は、4月28日の衆議院本会議で自民・公明・維新の賛成多数で可決され、5月13日から参議院での審議が始まっている。

参議院厚生労働委員会では参考人質疑が行われ、国民のいのちと暮らしを根本から脅かす法案の危険性が明らかになった(下表参照)。与党は5月26日の厚労委員会で採決強行を狙っている。

医療保険制度改革関連法案の主な内容

  • 入院時食事療養費の自己負担を一食260円から460円に引き上げるなど、経済的困難を抱えながら病気とたたかっている患者さんをさらに追い込む負担増計画
  • 紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入
  • 安全性、有効性が未確立な医療を「患者の自己責任」の名で広げる「患者申出療養」の創設
  • 都道府県に公的医療費削減の役割を担わせるとともに保険料引き上げ、徴収強化につながる「国保の都道府県単位化」
  • 国・都道府県が定める医療費適正化計画に医療費目標を設定
  • 健康・疾病予防等に取り組む加入者に、保険者がヘルスケアポイント付与や保険料への支援を行う、「自己責任」による予防・健康づくりの促進

5月13日、「いのちまもるヒューマンチェーン会議」主催の緊急国会内集会が開催された。集会では難病関連の患者会から、同法案に盛り込まれている「患者申出療養」「紹介状なし大病院受診時の最大1万円負担」について切実な訴えが寄せられた。

日本難病・疾病団体協議会 事務局長の水谷幸司氏は、「保険外併用療養制度の創設から8年間、当初は患者一人あたりの平均自己負担は40 万円程度だったものが、現在は70万を超えている」、「『患者申出療養』を導入すればさらに負担増が難病患者を苦しめることになる」とし、さらに安全性・有効性の担保がない同制度への反対をあらためて訴えた。

全国多発性硬化症友の会副会長の若林章氏からは、通院が困難な難病患者にとって、紹介状なしで大病院を受診せざるを得ない状況はしばしば存在するとして、一例として「都内の大学病院では、紹介状がない場合に1回の診察で8,640円もの保険外負担が求められる」ことを紹介。「現行の難病医療費助成制度における定額負担の廃止と、紹介状なし大病院受診時の定額負担の一刻も早い廃止を願っている」と訴えた。

ストップ患者負担増バナー

協会は、同法案の徹底審議と廃案を求めて5月21日の国会行動で、東京選出の衆参国会議員に対して要請を行った。会員の皆様には「新たな患者負担増をやめ、窓口負担の大幅軽減を求める請願」署名に引き続きご協力いただきたい。

(『東京保険医新聞』2015年5月25日号掲載)