「新型インフルエンザ等対策特別措置法案」の徹底審議と廃案を求める声明

公開日 2012年04月14日

2012年4月14日
東京保険医協会 第1回理事会

 

 「新型インフルエンザ等対策特別措置法案」がわずか5時間の委員会審議で衆議院を通過し、4月9日参議院内閣委員会に付託された。

 この法案は「新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、ならびに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする」ことを目的に、新型インフルエンザ等対策の実施計画、発生時における措置、緊急事態措置などを定めるとしている。78条まである法案に国民の権利制限が広範に盛り込まれていることは問題である。

 法案によると、ひとたび政府対策本部長の内閣総理大臣から「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」(32条)が発せられると、①検疫のための病院・診療所・宿泊施設の強制使用(29条5項)、②医師・看護師等への場所・期間等を定めた医療の実施の指示(31条3項)、③多数者が利用する施設の使用制限等の指示(45条3項)、④臨時の医療施設開設のための土地の強制使用(49条2項)、⑤緊急物資の運送や医薬品・医療機器の配送の指示(54条3項)、⑥特定物資の収容・保管命令(55条2項、3項)に違反すれば、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(76条)などが可能になる。

 このような国民の権利制限が盛り込まれる一方で、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」の「緊急事態」なるものの要件は「政令」で定めるという曖昧さを残している。新型インフルエンザ等への対策は決しておろそかにできないが、なぜ政府ならびに自民・公明両党は、広範な人権制限が必要となる「緊急事態」なるものについて国民に説明せず、本法案を性急に成立させようとするのか。理解に苦しむところである。

 2009年のA型H1N1インフルエンザ発生時、当時の厚労大臣が鳴り物入りで取り組んだ検疫強化・水際作戦が全く役に立たなかったことは記憶に新しいところだ。科学的根拠のない「性急」で「過剰」な対策は国民の中に無用の不安と混乱を引き起こすだけである。いま政府に求められているのは、拙速な立法化ではなく、専門家を含めた国民的な議論による合意形成ではないだろうか。

 よって、われわれは、この法案の曖昧さや問題点を国民の前に明らかにするため、国会における徹底的な審議の後に、廃案とするよう求めるものである。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法案」の徹底審議と廃案を求める声明 [PDF:102KB]