東京保険医協会 第87回定時総会決議

公開日 2013年03月23日

 昨年12月に行われた総選挙の公約どおり、安倍首相は消費税増税に向けた準備を進める一方で、生活保護制度の給付削減をはじめとして、社会保障の切り捨てを開始した。さらには、個人情報の利活用を行政分野に「限定」していた前政権の「共通番号」(マイナンバー)法案を、民間でも利用できるように「修正」するなど、社会保障・税一体改革を強引に推し進めようとしている。

 長引く景気低迷と雇用破壊によって、多くの医療機関が経済的な理由による受診の手控えや中断を経験する状況が生まれている。孤独死や子供の貧困が社会問題になるなど、貧困と格差の拡大が深刻化するなかで、社会保障制度を後退させるばかりか、国民に増税を強いれば、早晩、民意との激しい矛盾を引き起こさざるを得ない。

 われわれは、社会保障と雇用を含めた生活の再生と、平和を願う国民の声に応えて、戦後日本のよりどころであった平和憲法を守り、社会保障の充実を求めて奮闘するとともに、国民の生命と健康を守るために、以下項目の実現を求めるものである。

一、医療費の患者窓口負担割合と、自己負担限度額を大幅に引き下げること。

一、東日本大震災被災者の医療費窓口負担を無料に戻すとともに、被災地で地域医療を担う医療機関に積極的な公的支援を行うこと。

一、生活保護水準の引き下げを止め、支援が必要な国民には確実に保護を実施すること。

一、社会保障の給付削減と消費増税を国民に課す「社会保障と税の一体改革」は中止し、医療と生活必需品の消費税にはゼロ税率を適用すること。

一、社会保障の理念を「負担に応じて支払う」保険制度に変質させる社会保障制度改革推進法は廃止すること。

一、社会保障への国庫負担を元に戻し、所得再分配機能を発揮させて、給付水準を拡充すること。

一、混合診療の解禁や、諸外国の営利資本による病院経営など、医療格差を一層拡大させ、国民皆保険制度を破壊しかねないTPPへの参加を中止すること。

一、有効性と安全性が確立された手術・検査・医薬品はすみやかに保険収載すること。

一、公的医療保険の給付範囲は縮小させず、保険会社の利益のために医療内容が左右される「現物給付」型民間医療保険の導入はしないこと。

一、プライバシーを侵害する「共通番号」(マイナンバー)の導入は止めるとともに、医療や保健、介護の記録など、機微性の高い個人情報を、本人の承諾なく収集するデータベースの構築は中止すること。

一、先進諸国とのワクチンギャップを解消するため、水痘、おたふく、B型肝炎、成人用肺炎球菌、ロタウイルスの予防接種は一類疾病の定期接種とすること。

一、医師法21条の解釈にあたっては「診療関連死は全て届け出る」ことではない旨、関係する省庁と医療機関に周知徹底すること。

一、原発の再稼働は止め、脱原発を基本とするエネルギー政策に改めること。

一、沖縄県議会、沖縄県市町村関係4団体、市町村、市町村議会連名の建白書が求めているように、米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。

 以上決議する。

2013年3月23日
東京保険医協会 第87回定時総会

東京保険医協会 第87回定時総会決議[PDF:116KB]

関連ワード