「座薬」と伝えて「座って服用」? 医療従事者のための手話入門講座 聴覚障害者の診療対応を学ぶ

公開日 2015年12月25日

手話入門講座の様子画像

 協会研究部は11月21日、「医療従事者のための手話入門講座」を開催し、76人が参加した。

 はじめに協会理事の平野浩二研究部副部長より、聴覚障害者診療について話があった。平野先生は、聴覚障害者とひとまとめにいっても、実際は難聴者、ろう者、中途失聴者と分かれており、残っている聴力やコミュニケーション手段などによりその対応方法は分かれるという。

 ただ、3者の共通点として、会話をするのを困難に感じるが理解力がないと思われたくないとの思いから、理解していなくてもうなずく傾向があるので注意が必要だと述べた。

 続いて、手話指導者の佐藤八寿子氏より医療場面の手話を実演し、参加者にも実践してもらった。自身がろう者でもある佐藤氏は、診療場面で間違えやすいコ ミュニケーションなどを織り交ぜながら話をした。例えば、「座薬」とだけ伝えても「座って服用する」という意味と勘違いしたり、「食間」という言葉も、 「食べている最中に服用する」と誤って解釈することもあるので注意してほしいなど医療現場ですぐ役に立つ手話指導だった。

手話入門講座の様子画像

最後に、聴覚障害者の精神保健福祉について、森せい子氏より講演があった。中途失聴者であり苦労をされてきたご自身の経験も踏まえて、聴覚障害者が直面する現状について事例を通して解説した。

聴覚障害者が安心して精神科医療を受けられて十分な意思疎通ができる環境づくりや、地域社会において聴覚障害と精神障害を併せ持つ人のためのサービスが十分にあることが必要なことを主張した。

参加者からは、「手話ができる医療機関はどのように探せばよいか」「手話だけでなく聴覚障害者の社会における現状なども勉強になった」「ろう者の方との接し方や注意点など学べてよかった」などの声が出た。最後に、森本玄始研究部員が閉会挨拶をし、盛況のうちに閉会した。

(『東京保険医新聞』2015年12月25日号掲載)