理事会声明「秘密保護法案に反対します」

公開日 2013年11月09日

2013年11月9日
東京保険医協会 第8回理事会

 10月25日、安倍内閣は「秘密保護法案」を閣議決定して衆院に提出しました。法案は行政機関の長が「特定秘密」とした情報を外部に漏らした公務員への罰則を、未遂でも最高懲役10年にしようとしており、国民の知る権利と言論の自由を無力化するものです。

 この同じ日の衆院本会議において、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案の趣旨説明・質疑が行われて審議入りしました。安倍総理によればこの法案は「首相官邸の司令塔機能を強化するために必要不可欠なもの」とされ、首相に権限を集中するためのものです。

 米国アーミテージ元国務副長官らは2000年、日本に対して集団的自衛権の行使を促すとともに、機密保持の立法化を求めました。日米は2007年「軍事情報包括保護協定」を締結しており、日本は軍事機密情報に「米国と同等の保護」を要求されています。

 秘密保護法のもとでは、「特定秘密」に関係する公務員、民間業者、国会議員と秘書、およびその家族と友人たちを、「適正評価」の名目で警察が調査します。「特定秘密」を知ろうとした市民も、漏えいの教唆、扇動、共謀などという曖昧な基準によって最長5年の懲役に処せられます。何が秘密かも秘密のために、調査、取材、報道には無言の圧力がかかります。国民のプライバシーと知る権利に対する、著しい侵害といえるでしょう。

 国会議員でさえも秘密保護法の適用を受けることは問題です。国会議員は安全保障問題にも、外交問題にも関与する役割があるのに、情報を得られなければ国会の国政調査権が無力化され、行政をコントロールできなくなります。

 特定秘密の指定は5年間とされますが更新が可能で、30年を超えても内閣が承認すれば更新され、行政にとって不都合な情報は永久に隠し続けることもできます。特定秘密の定義はあいまいで、別表で示された分野は広範囲です。しかも条文には別表に該当する事項「に関する」情報とあり、指定範囲は無制限になります。法案は秘密指定には熱心ですが、情報の保存と公開についてはまったく定めていません。

 現行の「防衛秘密」を管理する防衛省が2011年までの5年間に廃棄した秘密文書は3万4千件にのぼり、一方では2011年までの9年間に秘密指定が解除されたのはわずかに1件であったといわれます。防衛秘密は公文書管理法の適用外のため、廃棄された情報の秘密指定は妥当だったのか、という検証ができません。国民への説明義務を忘れています。

 かつて日本は誤報にもとづくイラク戦争で米国に加担しました。大義のない戦争は両軍と市民に夥しい死傷者をつくり、今なおテロの被害が続いています。米欧にはいま精神障害に苦しむ多数の兵士がいます。この戦争犯罪は審理されていません。情報公開と世論こそが世界を平和に導きます。

 以上のことから秘密保全法案を廃案にすることを要求します。

秘密保護法案に反対します-声明- [PDF:122KB]