公開日 2013年02月05日
国税通則法「改正」税務調査はこう変わる (税務調査対策セミナー)
12月13日、協会セミナールームで開催した税務調査対策セミナーには、会員医療機関から48人が参加した。講師は、保険医サポートセンター税理士団の粕谷幸男税理士(KASUYA税理士法人)。
48人が参加した税務調査対策セミナー 今回の通則法改正は、民主党政権時代に公約として掲げられ、税務調査関連法史上初の大改定であった。特に、当初「納税者権利憲章の策定」を含む点が画期的だったが、結局土壇場で法案は修正され、「憲章」のくだりはすべて削除されてしまった。
この点について粕谷氏は、「納税者の権利を保障することは北欧各国では常識であり、納税者権利憲章も整備されている。今回の改定は、納税者の権利を宣言しないまま、課税庁側の質問検査権が強化されているが、その限界も定められた」と問題点を指摘した。
これまで日本の税務調査は、所得税法234条に実施する旨が規定されるのみで、調査手法は「調査官の裁量権に基づく」と理解されていた。今後は、事前通知から実際の調査、終了通知まで、法律に則らなければすべて無効となる。「調査官側にも法律の足かせができたことは、視点を変えれば納税者にとって有利な点」と粕谷氏。今後の税務調査では、“法律の限界”を見極める納税者側の読解力が求められる。そのためにも、「ふだんから顧問税理士と活発な意見交換をしてほしい」と呼びかけた。
変わる税務調査と消費税増税(中野支部例会)
12月18日、中野支部例会でも、国税通則法「改正」をテーマに医院経営問題について学習会を開催し、奥津年弘税理士(東京あきば会計事務所/保険医サポートセンター税理士団)を講師に、会員医療機関から14人が参加した。
奥津氏は、今回の法改正が「世紀の大改悪」であり、中でも、納税者の理解・協力を得て行われる任意調査において、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則が規定されたことは「異常としか言いようがない」と述べた。
また、今回から調査対象物件の留め置き権限が認められるようになるが、調査官から求められても原則断るべき。調査は、決められた時間、決められた場所で行うのが基本である。納税者側も調査理由をなるべく具体的に聞いたうえで一定時間調査を受ける“受忍義務”を全うすることが重要で、交渉の際は税理士と一緒に対応すべきとした。
参加者の半数が税務調査未経験であることを踏まえ、奥津氏はさらに実際の調査の流れを具体例とともに解説。2012年秋に実施された「リハーサル調査」では、新しい調査手法に基づいて通知・調査を行うことになっていたが、徹底されない部分が多々見受けられたという。
なお、調査でよく調べられる点として、人件費(給与所得控除・源泉徴収の処理/実在する人物か)、日計表・現金の出納、「窓口負担ゼロ」の患者の内訳、交際費、月遅れの口座振込・未収金などを例に挙げた。
Q1. カルテ開示を求められたら?
A. 開示はあくまで拒否を貫くべき。要求する理由をただし、「他の書類でも証明できる」として断ること。
Q2.交際費の金額はどれくらいが妥当か。1回10万円は認められるか?
A. 事実上必要かどうかという内容による。開院10周年パーティーなどの場合は、参加者が明確であれば高額でも認められるが、一般的な会合では認められない。年間を通じてあまりに交際費が多く、記載が不備であると修正を要求してくる。
Q3.香典や歳末助け合いなど、領収証が出ない場合はどうするのか?
A. 香典のお礼状に金額を記入して領収証代わりにする。歳末助け合いは領収証をくれることが多いが、ない場合は日付と金額を記したメモや「出金伝票」でもよい。
Q4.税務調査の際、従業員への質問は拒否できるか?
A. 答弁者は、原則医師本人(専従者又は役員)か税理士となる。従業員への直接質問は断る。先生が指名して答えさせることもできるが、「後日、職員に聴取した上で回答する」とすれば回答拒否にはならない。
Q5.税務調査が来ないのだが?
A.課税庁は「長期未接触はさけること」と言っており、目安として個人は10年に1度、法人は5年に1度は対象とするようにしている。しかし所得が赤字のところは省略される傾向にある。前回調査に入って簡単に修正に応じた医療機関には、ルーティンでまた来る傾向が高い。逆に「ものを言う納税者」からは取りにくい。ぜひ先生方も今回の改正法を学び、税務署に対して積極的に質問・主張してほしい。