保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

救急医療シンポ4 高齢救急患者の搬送居住地域で体制整備を

公開日 2013年08月25日

シンポジウム「東京の救急医療―課題と展望4」が7月27日、協会セミナールームで開かれた。

今回は、「東京ルール(※)の4年間、東京都保健医療計画での充実強化策」とのサブタイトルを掲げ、4人のシンポジストを招いた。

シンポジストは、有賀徹先生(昭和大学病院院長・日本救急医学会監事)、遠藤善也氏(都福祉保健局医療政策部救急災害医療課課長)、竹内栄一氏(東京消防庁救急部救急医務課課長)、石原哲先生(医療法人伯鳳会白髭橋病院地域救急医療センター)。当日は、都議会議員6人を含む35人が参加し、首都の救急医療の今とこれからについて活発な意見交換が行われた。


※「東京ルール」
2009年8月運用開始。中等症以下の患者のうち救急隊による医療機関選定において、5カ所の救急医療機関に受け入れ要請を行ったにもかかわらず、受け入れ医療機関が決まらない場合(又は連絡開始から概ね20分以上経過した場合)、救急隊は「地域救急医療センター」に調整を依頼する。

報告①「救急医療の今後―高齢社会について考える」  有賀 徹 先生

有賀  徹  先生(昭和大学病院院長・日本救急医学会監事)

各地の消防本部に「救急出動件数の増加した要因」について聞いたところ、80.9%が「高齢の傷病者の増加」をあげ、54.3%が「熱中症傷病者の増加」をあげた他、38.4%が「緊急性が低いと思われる傷病者の増加」をあげている。

「急ぐべきは急ぐ、待つべきは待つ」―これを社会の行動規範とした、救命医療の必要な人から優先して医療資源を提供する社会のあり方が重要である。

高齢救急患者の対応を患者の居住地域内で完結させるため、医療機関が保有する救急車も活用しながら「地域高齢者搬送支援体制協議会」といったものを設置する必要があるのではないか。かかりつけ医と地域密着型病院が連携し、地区医師会はその接着剤の役割を果すことが期待される。

患者が住む地域内で完結する医療体制が構築できれば、救急救命を一旦は地域外の三次救急医療機関に任せても、その後患者を地域に戻すことができ、「さまよえる高齢患者」を大幅に減らすことにつながるのではないか。

報告②「東京都保健医療計画(第五次改定)における救急医療の課題と目標」 遠藤 善也 氏

遠藤  善也  氏(都医療政策部救急災害医療課課長)

2013年3月改定「東京都保健医療計画」(第五次改定)は、都の保健医療に関する「基本的かつ総合的な計画」であり根幹を成すものだ。5年に一度見直しが行われ、今次改定の計画期間は、2013年度から2017年度までとなる。

「基準病床数」は、療養病床と一般病床数を合算し、二次医療圏単位で病床を定めることになっている。基準病床数は9万5,627床(既存病床数10万4,140床、2012年10月1日現在)。また、「精神病床」(基準病床数2万1,956床)、「結核病床」(同398床)、「感染症病床」(同130床)は、都全域で基準病床数を定める。

救急医療体制見直しの具体的内容としては、都の諮問機関である「救急医療対策協議会」より報告が出されている(2013年5月)。その内容は、救急患者を受け入れる医療機関の努力に適切に報いる―などの意見が出されている他、吐血・下血患者や開放性骨折患者について、2次医療圏を超えた広域的な仕組みづくりの検討についての意見が出されている。

報告③「東京の救急活動の現状と問題点」 竹内 栄一 氏

竹内  栄一  氏(東京消防庁救急部救急医務課課長)

現在、都内全域(稲城市除く)を管轄区域として81署236隊(救急隊員5,957人)で対応している。

搬送者の重症度を「初診時の程度別」に見ると、高齢者以外では64%が軽症、30.5%が中等症であるのに対し、高齢者については軽症が40.4%、中等症が47.6%となる(2011年)。また、高齢者の救急患者の場合、コミュニケーションが取りにくいケースもあることから情報収集や家族の意向確認に時間を要することも多く、こうしたことが救急活動時間の延伸につながっている。

現在、都内の救急出場件数は1日約2,000件、現場までの平均距離2.5km、平均現場到着時間は7分30秒だが、最近のように熱中症患者が急増し、出場件数が1日2,500~2,600件に達すると、現場到着時間は延びざるを得ない。今後は、患者居住地域の病院が所有する救急車の活用なども検討されていくべきだ。

報告④「救急医療の東京ルール」 石原 哲 先生

石原  哲  先生(白髭橋病院地域救急医療センター)

2012年1~12月における「東京ルール事案」の総件数は、1万4,449件(39.6件/日)、当院(白髭橋病院)が属する「区東部」(墨田・江東・江戸川)の発生件数は2,234件(6.1件/日)、そして白髭橋病院の受入件数は、891件である。

白髭橋病院における「受入困難理由」をみると、「アルコール」が113件、「精神疾患過量服薬」94件と、精神疾患関係の困難事例が多くなっている。

東京ルールにおいて「精神疾患」を有する患者への対応は大きな課題となっていたが、「精神疾患を有する身体合併のある調整困難患者」の受入支援事業が2011年12月から運用が始まった。国立国際医療センターが常勤の精神科医による診療体制と空床の確保を図っている。

その他、「東京都CCUネットワーク」(62医療機関で構成)、「東京都脳卒中緊急搬送体制」(認定医療機関155病院)、「熱傷救急医療事業」(13医療機関で構成)、「東京母体救命搬送システム」(3医療機関を指定)などが運用されている。「東京都結核緊急ネットワーク」事業が2001年3月から運用が開始されている。

後半はシンポジウムが行われ、活発な意見交換が行われた。

地域内での救急搬送 財政支援とコーディネーターの配置を

シンポジストの4氏(左より有賀、遠藤、竹内、石原各氏)

シンポジウムでは司会の細田悟理事(病院有床診部部長)が、今回の第五次保健医療計画における都の療養型病床整備計画について質問した。これに対し都福祉保健局・遠藤氏は「国は2012年12月、介護療養病棟について当面6年間の廃止延期をしたが、その後、具体的方針は明らかにしていない。今後の国の動向を見定めた上で都の療養病床の整備目標も決めていく」と答えた。

続いて、フロアから「墨東病院で妊婦のたらい回し事件が問題になったが、現在、こうした事態はなくなったのか。また、脳卒中の救急搬送はどうか」との質問が出された。

昭和大学病院・有賀先生は「妊婦の救急搬送については、現在、産科の先生が妊婦の搬送先を自ら探すという事態はなく、東京消防庁で東京ルールに従い搬送先を探すことになっている」と答え、さらに東京消防庁・竹内氏が脳卒中患者の救急搬送について「現在の体制で、たらい回しという事態は起きないと考えている。脳卒中(運動障害、感覚障害あり)についてはt-PA治療(血栓溶解療法)ができる医療機関に救急搬送を行うシステムが整っている」と答えた。司会の細田理事からも「脳卒中では、現在の救急搬送システム上で問題が起きることはまずないので、安心してもらいたい」との補足説明が行われた。

さらにフロアから「地域病院に救急搬送用のベッドを確保した場合の、都や国の公的な財政支援」を求める意見が多く出された。遠藤氏は、「在宅患者・高齢者を病院救急車の活用で円滑に搬送し、地域内で受け止めてもらう―その体制維持のための財政支援が検討されている。この事業は、国の地域医療再生基金を利用するもので、8~9月には国の認可が出される予定」と答えた。

また、フロアからは「患者の搬送先をスムーズに決めるための水先案内人としてのコーディネーターを東京消防庁だけでなく地域にも配置してほしい」との声も出された。

協会はシンポジウムで出された要望事項の実現のため、引き続き行政に対し要請等を行っていく。

(『東京保険医新聞』2013年8月25日号掲載)