雇用トラブルを未然に防ぐ! 人事労務セミナーを開催

公開日 2014年07月25日

講師の石田仁社労士

協会経営税務部は6月12日に経営コンサルタントで社会保険労務士の石田仁氏を講師に招き、人事労務セミナーを開催し、57人の会員等が参加した。

石田氏はトラブル防止・円満解決の基礎知識として、労働基準法やパートタイム労働法、労働契約法などの法律を簡明に解説し、法令を遵守するよう呼びかけた。

この間の改正点として「2008年4月に施行されたパートタイム労働法では、①職務内容が正職員と同一、②人事異動の仕組みが正職員と同一、③契約期間の定めなし、に該当するパートタイマーは正職員と同じ待遇が求められる」、「2010年4月に改正された労基法で、年に5日分を限度として時間単位での年次有給休暇がとれる制度が設けられた」と解説した。

常時10人以上雇用している場合に作成義務のある「就業規則」のほか、10人未満でも作成義務のある「労働契約書」について作成の手順を説明。就業規則を作ることによって労働条件が明確化し、無用なトラブル防止にもなる。さらに院長が「こういう職場ですよ」という思いを込めて作成されたいと強調した。

給与の決め方は、同業他社の水準や在職者とのバランスを参考にし、「東京都の最低賃金869円+仕事のつらさ+時間帯」などを加味してはとアドバイスした。また、基本給の他に諸手当をつける場合は職能、資格、技術手当てなど能力給型手当の方が主流となっていると説明した。

57人が参加した人事労務セミナー(6月12日開催)

法定労働時間である1週40時間1日8時間(職員10人未満の場合は1週44時間の特例あり)を超えての労働は労基法で禁止されている。時間外や休日勤務をさせる場合は別途労使間の協定が必要である。石田氏は、「月で繁忙期と閑散期がある医療機関では『変形労働時間制』の採用を検討されたい」と提案。1カ月単位の変形労働時間制であれば届出も不要で柔軟な労働時間の設定が可能である。

「清掃や仕事の準備の時間などが労働時間に該当するか」との疑問に対しては業務命令の有無で判断されたいと解説した。

質疑応答

質疑では「夏休み取得希望日が重なり、休診を余儀なくされたがやむをえないのか」、「退職時に年休を買取できるか」等の質問が出された。石田氏は「業務の正常な運営を妨げる場合であれば院長は年休の時季を変更することができる」、「買取は違法ではないが、年休は職員が休むことに意義があり、計画的に取得できる環境整備が求められる」とアドバイスした。

(『東京保険医新聞』2014年7月25日号掲載)