保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

医療従事者のための手話入門 初の開催121人参加 「医療現場で生かしたい!!」手話実技を体験

公開日 2014年11月15日

手話の実技講習に熱心に取り組む参加者
講演する平野浩二協会理事(写真左)

協会研究部は10月18日、「医療従事者のための手話入門講座」を開催し、医師・医療従事者等121人が参加した。

最初に、今回の研究会を企画した平野浩二協会理事(聴覚障害者医療サポート協会会長)から「聴覚障害者診療について」と題し、講演があった。

平野理事は、聴覚障害者とひとまとめに言われることが多いが、残存聴力、コミュニケーション手段などにより難聴者(老人性難聴)・ろう者・中途失聴者の3者に分けられ、対応方法に違いがあると強調した。

講演する平野浩二協会理事(写真左) 例えば、耳の遠いお年寄りで補聴器をつけていない場合は耳元で大きな声で話しをする。補聴器をつけた難聴者の場合、正面から面と向かってゆっくり話をする方がいい。わかっていない表情をしたら、もう一度話しかける。

ろう者は、家庭内・ろう学校などで自然に覚えた手話を第一言語としているので、手話を介してコミュニケーションをとるのが一番スムーズである。また、筆談の際は、漢字で書く方が伝わりやすい。ろう者の場合、言葉を音として認識していないので、音を表すひらがなの方が苦手なので注意する。

中途失聴者は、音声言語をマスターしてから聴力を失った人なので、きれいな声が出せる。このため、聴こえるものとつい誤解されやすい。一番有効なのはこまめな筆談である。

聴覚障害者の共通の特徴として、理解力が悪いと思われたくない等の理由によって、理解していなくてもうなずく傾向がある。このため、本当に理解しているかどうか確認が必要になる。マイクで呼び出しても聞こえないので、順番がきたら直接手招きして呼ぶ。耳が聞こえないことが診察室の医師まで伝わっていないことが多いので申し送りは必ずすること、等を挙げた。

ろう者へ細かなニュアンス伝える工夫を

会話文の手話に挑戦

次に、ろう者で手話指導者の佐藤八寿子氏から、医療場面で役立つ手話について実技を交えた指導があった。

「病院」「医師」「看護師」などの簡単な手話単語から、「保険証と障害者医療証を出してください」「痛い場所はどこですか?」などの会話文の実技指導が行われた。特に、講師から指名された参加者が、会場前方で行った実技は緊張感を伴って好評だった。

また、佐藤氏は医療従事者に注意してほしい点として、ろう者は言葉を「単語」として理解しているので細かいニュアンスが伝わらないことがある。

例えば、筆談や手話などで「水分は、かまいません」と言われた場合はコーヒーやお茶は摂取していいと思ってしまうので、「飲むのは水だけにしてください」と具体的に伝える。「朝からごはんは食べないできてください」と伝えると、パンは食べてもいいと思ってしまうので、「全部の食べ物を食べないできてください」と伝えてほしいと強調した。

手話=視覚言語 喜怒哀楽の表情を豊かに

田中清氏

最後に、手話通訳士の田中清氏から、「手話通訳者から見た、ろう者診療の問題点」と題して講演があった。

田中氏は、ろうの両親を看取った経験や友人のろう者の通訳として医療機関に同行した経験などを話した。そのなかで、医療従事者に求めることとして、手話=視覚言語なので喜怒哀楽の表情をしっかりつけて話す、診療・問診の際は眼と眼を合わせて話をしてほしいと強調した。

また、ろう者は自分から情報を求めていかないと入ってこない、いわゆる「情報障害」の状態にあり、医療従事者の側がろう者はわかっているものとして見ないで、何事も一歩掘り下げて伝えて欲しい。診察を筆談で行う際は、意味がどちらにも受け取れる表現は避け、良いか悪いかはハッキリと表現してほしい、と話した。

また、若いろう者はパソコンを使えるので、患者に電子カルテのキーボードを渡し、それで医師と交互に筆談を行ったところ、非常にスムーズに意思疎通が出来たケースなども語られた。

参加者からは「今日学んだことを医療現場で少しずつ生かしていきたいです。まずは目を合わせて表情豊かにから!」「とても楽しかったです。また勉強したいと思います」などの感想が出され、好評のうちに終了した。

(『東京保険医新聞』2014年11月15日号掲載)