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第5回 救急医療シンポジウム――救急出動件数が4割増 救急告示医療機関は2割減

公開日 2014年08月25日

協会病院・有床診部は7月26日、シンポジウム「東京の救急医療―課題と展望」を開催した。今年で5回目を迎える本シンポのサブタイトルは、『病床大再編=「地域医療構想」と東京の救急医療体制、そのマッチングを考える』。会員はじめ、都内の救急医療関係者など39人が参加した。

シンポジストと各報告テーマは、次の通り。

① 「地域医療構想と東京の救急医療体制~そのマッチングを考える」(有賀徹・昭和大学病院長)
② 「在宅医療の現状と課題―地域完結型医療の構築に向けて」(中村洋一・中村診療所長/中野区)
③ 「東京都の救急医療体制の現状について―地域医療構想策定を控えて」(遠藤善也・都福祉保健局医療政策部救急災害医療課長)
④ 「東京消防庁救急活動の現状と救急相談センターの取組み」(新藤博・東京消防庁救急部救急医務課長)。

司会・進行は、細田悟(協会病院・有床診部部長)。

在宅と一体の救急医療体制が不可欠

有賀氏は、「75歳以上人口が2030年頃をピークに減少に転じる他県と比べ、東京、神奈川などは、2040年に向けてさらに上昇する」としたうえで、急増する高齢者の救急搬送について「肺炎・脳卒中・大腿骨頸部骨折については、まず地域密着型の病院が受けとめ、急性心筋梗塞・外傷性頭蓋内出血では、必要に応じ高次機能病院に搬送する体制を整備すべき」と強調した。

強化型在宅療養支援診療所の立場から参加した中村氏は、「在宅医療に救急病院のバックアップは不可欠。とりわけ3次救急から2次救急への連携を強化し、在宅と一体となった救急医療体制が必要」としたうえで、「高齢者の医療ケアには、経過に対する見通しと適切な医療介護の提供場所が必要。主治医にはケースカンファレンス、退院前カンファレンスなど、全体をコーディネートする役割が求められる」とまとめた。

遠藤氏は東京都救急医療対策協議会の2013年5月の答申に触れ、「休日・全夜間診療事業における確保病床の考え方を見直し、2014年1月には『東京ルール対象傷病者の拡大』を、そして2015年1月には『休日・全夜間診療事業の再構築』をはかる計画である」と説明した。

しかし、東京都地域医療構想(ビジョン)については、「国からはまだ何も示されておらず、すべてはこれから」とした。

 

図表1 東京都における救急医療体制の現況

新藤氏は救急医療体制の現況について、「1998年との比較で、救急告示医療機関は約2割減ったものの(98年/411医療機関→2013年/324医療機関)、年間救急出動件数は51万1,892件(98年)から74万9,032件(2013年)と、約4割増えている」とした(図表1)。

図表2 年代別搬送人員の推移

また、年代別では「75歳以上が全搬送の33.7%を占め、増加傾向にある」(図表2)としたうえで、高齢者の特徴として「独居・老老世帯、在宅療養中の高齢者、施設入居者が増えるなか、救急患者の情報収集に時間を要するケース、家族の意向確認に時間を要するケース、協力病院との連携が希薄なケースが増え、結果として病院選定時間が延伸している」とまとめた。

フロアからは、「東京の厳しい救急医療の現状がよく分かったが、このまま搬送依頼が増え続ければどうなるのか」との質問が出された。

軽症でも搬送依頼 老人施設の対応に苦慮

これに対し新藤氏は、「救急出動がこのまま増え続ければ、遠からず『全ての救急車が出払ってしまい回す車がない』という状況に陥ることも懸念される。老人施設によっては、軽症でも搬送依頼をしてくるところがあり、対応に苦慮している」と発言した。

緊急時の対応に正しい知識を

これに対し中村氏は「患者の家族に対し、患者の症状が悪化しても慌てず状況を確認し、不用意に救急車を呼ばないよう指導している。これは、高齢者施設にも当てはまることで、施設担当者に対し緊急時の対応について正しい認識を持たせることで、不用意な救急搬送依頼を減らすことができる」と指摘した。

参加者からは、「東京都地域医療ビジョンは、非常に重要なものだ。協会にはぜひ情報を共有し我々保険医の声を反映させてほしい」「東京消防庁の新藤氏の話が印象的だった。搬送依頼時における救急車の適正使用の対応が、いかに大切かを認識した」といった感想が聞かれた。

協会病院・有床診部は来年も継続して同シンポジウムを開催する予定だ。

(『東京保険医新聞』2014年8月25日号掲載)