理事会声明「特定秘密保護法の廃棄を求める――国際原則を踏みにじる特定秘密保護法」

公開日 2014年01月11日

 安倍政権は集団的自衛権の行使を容認し、海外で戦争できる国を目指している。「特定秘密保護法」はその一環だ。国家安全保障を理由とすると情報は際限なく隠される。戦争における情報隠し・情報操作は、戦争を泥沼化する。戦争は最悪のテロ行為であり、再び繰り返してはならない。協会理事会は生命と人権を尊重する医師団体として、国民の知る権利を奪って国民主権を侵害し、平和憲法に違反して日本を再び戦争に導く、特定秘密保護法の廃棄を要求する声明を東京都選出の国会議員、マスコミ、関係官庁に送付した。

 

2014年1月11日
東京保険医協会 第10回理事会

 安倍内閣が強行採決にもちこんだ特定秘密保護法は、行政機関の長が任意に「特定秘密」とした情報を漏らした公務員を、未遂でも最高10年の懲役で処罰する。情報を知ろうとした市民も、漏えいの教唆、扇動、共謀という曖昧な基準によって、最長5年の懲役で処罰する。これは国民の知る権利に対する著しい侵害である。

 特定秘密保護法は国会議員にも適用されるという。国会議員は安全保障や外交問題に関与する役割があるが、情報を得られなければ国政調査権を発揮できず、行政をコントロールできなくなる。国会が国権の最高機関でなくなり、三権分立が崩れ去る。

 特定秘密の分野は広く条文には「・・に関する情報」とあるように、定義もあいまいで、不特定のものをなんでも秘密にできる。指定期間は5年とされるが、30年を超えても更新が可能だ。行政にとって不都合な情報を隠し続けることは許されない。

 防衛計画や諜報機関の情報源など、限定された情報は非公開にされることがあるが、国民の知る権利との均衡が必要である。この難しい問題をテーマにして、国連や国際機関の職員、安全保障の専門家ら70か国の有識者500人以上が、南アフリカのツワネで議論してまとめた「ツワネ原則」が2013年6月に発表されたことを知るべきである。

 ツワネ原則は国際人権規約、欧州人権裁判所の判例、人権保護の国際的合意などに基づいており、正式には「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」と呼ばれる。国家が秘密を指定するにあたって考慮するべき国際的な指針として、現代の叡智の結晶とも言えるこの原則を無視することは国際常識をないがしろにするものだ。

 50項目にわたる原則は、「国民は政府の情報を知る権利がある」ということを大前提とし、人権や人道主義に違反する秘密を禁止している。そして秘密を指定する機関から独立した監視機構を置き、秘密解除の手続きを定め、永遠の秘密を禁じ、ジャーナリストや市民の処罰を禁止している。安倍内閣の特定秘密保護法はこれらすべてに違反している。

 安倍内閣は「特定秘密保護法」、「日本版国家安全保障会議」、「集団的自衛権」によって、日本を「戦争する国」にしようとしているが、いま地球上で大きな潮流となっている平和への道を進むべきである。

 太平洋戦争において、大本営の情報隠しは戦争を泥沼化させた。ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件は捏造であった。秘密と虚偽は戦争の温床である。日本は虚偽の情報によって米国のイラク戦争に加担したことを、まだ反省していない。戦争は最悪のテロ行為である。情報公開と相互理解によってこそ平和を築くべきである。

 私たちは生命と人権を尊重する医師団体として、国民の知る権利を奪って国民主権を侵害し、平和憲法に違反して日本を再び戦争に導く、特定秘密保護法の廃棄を要求する。

特定秘密保護法の廃棄を求める[PDF:121KB]