「日本経済新聞」(2月5日付け)記事への抗議および懇談要請

公開日 2014年02月13日

2014年2月13日

日本経済新聞 東京本社編集局長
 岡田 直敏 様

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 公的医療保険制度の充実に背を向け、誤った情報を発信する貴社「日本経済新聞」(2月5日付け)記事に抗議するとともに、診療報酬と消費税に対する理解を深めていただくため、懇談を申し入れます

 貴社2月5日付け「日本経済新聞」の記事「診療報酬改定案 医療機関に手厚く」は、今次診療報酬改定により、医科「初診料」「再診料」が消費増税率以上に引き上げられたことに対して、「医療機関にお金をばらまくだけ」「(消費税の)増税幅を上回る引き上げを平然と求める医療関係者の感覚の鈍さは否めない」などと述べています。これは、医療機関が被っている消費税負担の実態と深刻さを理解していない一方的な記述であり、また、「医療機関は国に消費税を納めていない」と、保険医を脱税者呼ばわりするに至っては暴言以外の何ものでもありません。私たちは地域医療を担う保険医の団体として、このような記事を掲載した貴社に抗議します。

 そもそも公的医療費は消費税非課税であるため、仕入れに関わる消費税が相殺されず、医療機関の負担、すなわち「損税」となり、医療機関の運営を圧迫しています。また、医療器具や医療器械、水道光熱費、施設の取得などにも課税されているので、医療機関の規模や診療科目によって消費税の負担は大きく異なるのが実態です。

 この「損税」問題を解消するために、わたしたちは消費税の「ゼロ税率」適用を求めています。そうすれば医療のために支払った消費税は還付され、診療報酬に上乗せすることもなく、患者負担に転嫁する必要もなくなるからです。購読料への消費税課税問題では、貴社も加入する日本新聞協会が「ゼロ税率」適用に言及しています(2013/1/15声明)。患者負担増につながらない「損税」解決の道を読者に示すのが良識あるマスメディアの役割ではないでしょうか。

 また、この記事で問題なのは、今次改定は消費税増税分を除くとマイナス改定であることに触れないばかりか、「効率化 切込不足」の見出しを立て、さらなる医療費の削減を求めていることです。診療報酬は公的医療制度によって国民に給付する医療の質と量を規定する原資であり、かつ、医療機関運営の原資です。この改善なくして国民医療の向上は望めません。

 地方では医療過疎が進み、都市部の中核病院でも特定の診療科が再開できない状況が続いています。日勤・夜勤、そして日勤と続く過酷な連続勤務も常態化しています。このような状況を改善し、国民に必要な公的医療を確保するためには、先進国に比べて国内総生産に占める割合が低い日本の医療費を引き上げることが求められているのです。

 記事では、診療報酬の引き上げが患者負担の拡大につながるとして、しきりに医療機関と患者の対立を煽っています。このような不毛なキャンペーンはやめるべきです。ヨーロッパの先進諸国のように窓口負担を軽減するとともに、雇用主の保険料負担を引き上げ、国の負担と企業の社会的責任を果たさせることで国民負担を抑えることが本筋です。(これらの国々では企業の国際競争力も日本以上にあります。)

 つきましては、医療機関における消費損税の実態などの資料を見ていただくとともに、各国の医療財源の状況なども踏まえて、正確な報道と良識ある表現をお願いするため、是非、当会との懇談の場を設けることを申し入れます。

以上
「日本経済新聞」(2月5日付け)記事への抗議および懇談要請[PDF:134KB]