東京保険医協会 第89回定時総会 決議

公開日 2014年03月22日

2014年3月22日
東京保険医協会 第89回定時総会

 

 安倍政権が発足して1年が経過したが、消費増税と社会保障の切り捨てを同時に行う「一体改革」が進められている。「企業が世界一活動しやすい国」、「戦争する国」をつくるために、国民のいのちと暮らしが犠牲にされている。本年4月の診療報酬改定は、実質1.26%のマイナス改定であり、これでは医療崩壊を押しとどめることはできない。今次改定では病院のさまざまな要件を強化して急性期病床を半減させる医療提供体制の再編計画が示された。政府は地域医療の責任を地方自治体に押し付けようとしている。診療所には医療費削減とともに、「地域包括ケアシステム」という名で、実現困難なさまざまな要件が要求されている。介護の分野においては要支援者給付が市町村の事業に移行され、特養入居者が要介護3・4・5に制限されようとしている。そのほか生活保護の抑制、年金引下げなども継続的に行われている。これらは、患者・利用者から医療・介護のサービスを奪い、負担を強いることになる。一方、医療特区や混合診療の解禁など、医療と介護の市場化・営利化が進められようとしている。

 90年代以降、新自由主義路線によって、「小さな政府」の掛け声のもと、自助・自立を求めて年金、医療、介護、雇用、教育等の国民の安心と生活を支えるあらゆる分野で公助が後退し、国民は痛みを強いられてきた。安倍政権はアベノミクスと称する経済政策をとるが、貧困と格差が広がり、生活の安定や安全が脅かされる中で、原発、TPP、雇用、貧困問題など、多くの分野で国民各層による運動が広がっている。各種世論調査の結果が示すように、国民は生活と平和がこれ以上脅かされることを望んでいない。われわれは、日本国憲法の国民主権・基本的人権・平和主義が尊重され、誰もが社会保障の恩恵を受けられる平和と国民生活優先の新しい国づくりを求める。その立場から、以下項目の実現を求めるものである。

1.国民が必要な医療・介護をうけられるように、一部負担金や利用料をひき上げる計画は中止すること

2.国民医療の向上のため、診療報酬の実質マイナス改定を撤回し、適切な診療報酬を確保すること

3.安上がりな医療・介護をめざす「地域包括ケアシステム」の構築や「地域医療ビジョン」の拙速な導入をおこなわず、必要な人材と費用は国の責任において確保すること

4.生活保護利用者に後発医薬品使用を強要することは、人権を無視しているので中止し、主治医の医学的判断を尊重すること

5.保険料ひき上げにつながる国保の広域化をやめ、国保・後期高齢者の保険料をひき下げること

6.東日本大震災の被災者の医療・介護について、一部負担金免除と保険料軽減措置を復活すること

7.介護系サービスの給付を縮小せず、医療系サービスも医療保険によってうけられるようにし、利用料は軽減すること

8.混合診療の解禁・拡大は中止し、安全性と効果が確認された新しい治療法はすみやかに保険収載し、国民が等しく医学の恩恵をうけられるように努力すること

9.社会保障を解体する社会保障改革推進法とプログラム法を停止し、医療・介護総合法案を廃案とすること

10.医療不信を煽る医療事故調査制度の拙速な実施は止めること。事故調査の目的は医療の安全と事故の再発防止であることを明確にし、医療担当者への刑事責任の押しつけは止めること

11.社会保障を営利企業の儲けの場にする「一体改革」路線と「成長戦略」を撤回すること

12.医療の市場化を狙うTPPから即時撤退し、医療の非営利原則を守ること

13.内需を抑制し国民生活を破壊する消費税増税を中止し、医療機関の損税解消のため、公的医療にはゼロ税率を適用すること

14.社会保障財源は消費税に頼らず応能負担を原則とし、企業と個人の所得に応じた税と保険料で確保すること

15.原発の再稼働と輸出は中止し、再生可能エネルギーを軸としたエネルギー政策へ転換すること

16.日本国憲法の国民主権・基本的人権の尊重と平和主義を守り、集団的自衛権を容認せず、特定秘密保護法を廃止すること

以上、決議する。

東京保険医協会 第89回定時総会 決議[PDF:144KB]

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