混合診療を解禁する「選択療養」制度に反対する

公開日 2014年04月23日

2014年4月23日
東京保険医協会
会長 拝殿 清名
政策調査部長 須田 昭夫

 

 規制改革会議は、混合診療を大幅に拡大する「選択療養」制度を提案した。この「選択療養」制度は、患者と医師が契約すれば、任意の自由診療を保険診療と併用できるようにするもので、混合診療の全面解禁にひとしい。有効性、安全性、価格の妥当性が保証されない医行為を、保険診療が下支えする仕組みを、容認することはできない。

 規制改革会議が示した手続きは、①医師は併用する保険外診療の必要性、リスク、治療計画を書面で説明し、患者と契約書を交わす。②契約書を保険者に提出する。③保険者は、保険診療に悪影響を及ぼすことが明らかな場合等を除き、保険給付を認めるという簡単なものである。

 これでは保険外診療の安全性や有効性の問題を医師と患者間の契約に丸投げするとともに、混合診療の適否を保険者に判断させることになる。日本医師会、患者団体、保険者は、いずれも一斉に反発している。日本難病・疾患団体協議会(JPA)は「藁にもすがりたい思いの患者にとって、対等なインフォームドコンセントがどの程度行われるか」に疑問をなげかけている(JPA要望書/4/3)。健保組合連合会、国保中央会、協会けんぽの3団体は、「保険者が、保険外診療の有効性・安全性を判断することは、事実上不可能である」(保険者三団体4/3)と、あい次いで「選択療養」に反対の声をあげている。

 このような動きに対して、規制改革会議は改めて、手続きとルールを発表した。「一定レベルの学術誌に掲載された2編以上の論文がある」「国際的に認められたガイドラインがある」「全国統一的な中立の専門家によって評価する」などである。しかし、「一定レベルの学術誌」とはなにをさすのか不明であり、このような曖昧な条件では医療の安全性・有効性が担保されるものではない。また、「国際的に認められたガイドライン」「全国統一的な中立の専門家によって評価」というのならば、国内での検証を政府が進めて、保険収載に向けた手続きを進めるのが筋道である。さらに、「安全性・有効性の確認はできるだけ迅速に」と主張しているが、拙速な判断は国民の命を危険にさらす恐れもある。

 保険収載を前提とした高度医療が対象となる「評価療養」とは異なり、「選択療養」は保険収載を前提としていない。そのため、「選択療養」になると保険外医療として固定され、医療保険による給付の道が閉ざされることになる。安全性と有効性が確認された場合に保険収載を申請せず、「選択療養」のままにとどまれば、価格の妥当性を検証できず、長期にわたって高額な料金で「販売」することも可能となる。「購買力」の差により、患者が必要とする医療に格差が生まれるのだ。

 「企業が世界で一番活躍しやすい国にする」という安倍政権の下、規制改革会議は一貫して福祉の削減を要求し、医療の市場化・営利化を求めてきた。しかし、国民の命と引き換えに医療を金儲けの場にすることは許されない。

 われわれは国民の医療と健全な公的医療保険を守る立場から、混合診療の全面解禁にほかならない「選択療養」制度に反対し、その撤回を求める。そして、安全性と有効性が確認された新しい治療法はすみやかに保険収載し、国民が等しく医療の恩恵をうけられるように要求するものである。

以上

混合診療を解禁する「選択療養」制度に反対する[PDF:125KB]