医療・介護総合法案の衆議院通過に抗議するとともに、徹底審議により同法案の廃案を求める

公開日 2014年05月15日

2014年5月15日
東京保険医協会
会長 拝殿 清名
政策調査部長 須田 昭夫

 

 5月15日、徹底審議を求める国民の声を無視して、衆議院本会議は医療・介護総合法案(以下「総合法案」)を可決した。皆保険を担う医師・看護師の確保や介護労働者の就労環境改善なしに、医療・介護の提供体制を整備する国の責務を地方に丸投げするとともに、給付削減と負担増を国民に押し付ける同法案の衆議院通過を、全野党が反対する中で強引に採決した自公両党に満身の怒りをもって抗議するものである。

 「総合法案」は①病床数を地域ごとにコントロールする地域医療ビジョンの策定を都道府県に求め、2025年までに一般病床を42万床削減するという政府の計画実現を目指すとともに、②年間収入が一定以上の高齢者(単身者世帯は年収280万円以上)の介護保険の利用者負担を1割から2割に引き上げる。③要支援者への在宅サービスと通所サービスを全国一律の介護保険給付メニューからはずし、区市町村が独自の基準で実施する地域支援事業に移行させ、サービスの担い手を専門職であるヘルパーからNPOやボランティアに置きかえ、自治体には事業費の上限額を定めたサービスの抑え込みを求める。④特別養護老人ホームへの入所者を要介護度3以上に限定し、要介護度1、2の軽度者を特別養護老人ホームから締め出し、必要な医療・介護を受ける場と生活の場を奪い、利用者、家族、介護従事者に重い負担と困難を強いるものだ。

 さらに同法案は、「地域包括ケアシステム」とともに「看護師特定行為の研修制度」を規定した。これは、看護師の特定行為拡大によって医師要らずの安上がりな地域医療を目指す①「地域包括ケアシステム」に向けた人材養成の制度化に他ならない。さらに「臨床研究中核病院」「国家戦略特区での国際医療拠点」「臨床教授等外国医師」などの規定が新たに盛り込まれている。「臨床研究中核病院」を、「企業の要求水準を満たすような国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施されるよう」 (「健康・医療戦略」2013/6/14関係大臣申し合わせ)に、創薬・治験のセンターとして位置づけるとともに、「国家戦略特区」に国際医療拠点を設け、外国人医師の診療などを認めて混合診療の拡大や医療ツーリズムに道を開こうとするものだ。すなわちアベノミクス第三の矢「成長戦略」に位置づけられた規制緩和による医療市場拡大・医療営利化を進めることが目的だ。そして、制度が生み出す医療事故の再発防止を本来の目的とすべき医療事故調査制度を医師個人の責任に押しとどめようとする「医療事故調査委員会」の制度化も謳われている。

 このように今後の医療・介護の姿を根本から大きく変えてしまう19本もの法案を一括りにして、「総合法案」などと称して一会期で成立させようというのは前代未聞である。われわれは医療現場や国民の願いに逆行する「総合法案」の衆院通過に改めて抗議するとともに、参議院では徹底審議の上、廃案とするよう求めるものである。

以上

医療・介護総合法案の衆議院通過に抗議するとともに、徹底審議により同法案の廃案を求める[PDF:109KB]