声明「病床機能報告の事務局業務を企業に全面委託することに断固反対する」

公開日 2014年10月09日

2014年10月9日
東京保険医協会 会長 拝殿 清名 
病院・有床診部長 細田  悟

 

 改定医療法に基づき一般病床・療養病床を有するすべての病院・有床診療所に対し提出が義務付けられた「病床機能報告」について、10月1日からその受付が開始された。

 「病床が担う医療機能」については、「4つの機能」(高度急性期機能/急性期機能/回復期機能/慢性期機能)の中から1つを選び、現在の医療機能(2014年7月1日)、6年が経過した時点における医療機能の予定等について報告が求められる他、「構造設備・人員配置等に関する項目」については、病床数・人員配置・機器、入院患者の状況等について病棟ごとに集計し報告をさせ、さらに「具体的な医療の内容に関する項目」についても報告が求められている。各医療機関は、こうした極めて煩雑な報告作業を多忙な日常診療に加えて行わなければならない。これは、病院業務の負担軽減に逆行するものである。

 そして、該当する医療機関は指定の報告様式に入力(記入)のうえ、「平成26年度病床機能報告」事務局に報告データを提出するが、さらなる問題は、厚生労働省が事務局業務を一企業である「みずほ情報総研」に全面委託していることだ。

 委託された「みずほ情報総研」は、医療機関からの疑義照会等への対応、「全国共通サーバ」の整備と病床機能報告対象医療機関から提出される情報の集計等々、本制度の実施に係る事務局業務の全てを担当する。

 これら病床機能報告の内容はまさに医療情報のかたまりであり、一つの医療機関の態様をすべて丸裸にするものといってよい。しかし、こうした重要な情報の収集事業に対し厚労省は直接タッチせず、「みずほ情報総研」に全面委託している。これはまさに「一企業への丸投げ」であり、国の責任を放棄したに等しい。極めて秘守性の高い医療情報の収集・管理を一企業に全面委託することが、果たして許されるのだろうか。私たち東京保険医協会は、病床機能という重大な医療情報を一企業に一括管理させることに断固反対するとともに、情報収集業務について守秘の面からも厚労省自らが細心の注意をもって取り扱うよう強く求めるものである。

 また病床機能報告は、今後各都道府県が二次医療圏ごとに「地域医療ビジョン」を策定(2018年~)する際の重要な基礎データとして用いられる。地域医療ビジョン策定の際には、地域の種別ごとの病床必要数の調整も行われるが、調整がつかなければ都道府県の権限で病床種別ごとに必要病床数に合致するよう再調整が行われる。都道府県には強い権限が付与され、調整に従わない医療機関には、医療機関名の公表や各種補助金の不支給などのペナルティが課せられるとされている。私たちはこうした都道府県の権限強化に対し強い危惧の念を抱くとともに、医療費削減の手段としての地域医療ビジョン策定に強く反対する。

 地域医療ビジョンは、地域の医療機関・住民が求める医療をいかに確保し実現していくかという視点から策定すべきである。東京保険医協会は、医療費削減を阻止し必要な地域医療を確保すべく今後の厚労行政の動向を厳しく監視していくものである。

以上

声明「病床機能報告の事務局業務を企業に全面委託することに断固反対する」[PDF:125KB]