国のアスベスト健康被害対策の不作為責任を断罪した最高裁判決を支持する

公開日 2014年10月15日

2014年10月15日
東京保険医協会 
公害環境対策部長 赤羽根 巖

 

 最高裁は10月9日、「国民の生命や健康を、経済発展の犠牲にしてはならない」として、大阪・泉南アスベスト国家賠償訴訟で国の不作為責任を断罪する画期的な判決を言い渡し、原告に対する賠償責任を認めた。

 判決は、石綿工場労働者の石綿肺罹患が深刻化し、医学的にも石綿の危険性が明らかとなっていた1958年当時から、局所排気装置の設置が石綿の粉じん暴露に有効であることが確認されていたにもかかわらず、71年に至るまで排気装置の設置を義務付けなかった国の不作為責任を厳しく問い糾した。

 今回の判決は、全国各地で提訴が続いている「建設アスベスト訴訟」の原告らを力づけるものでもある。

 ただし、この判決には、①粉じん濃度の規制強化や防じんマスク着用の義務化を行わなかったことに対して国の違法性を認めなかったこと、②71年以降に作業に従事した7人の原告に対しては国の責任の対象から除外したこと、③原告の家族や近隣住民の被害者の救済は門前払いとしたことなど、見逃せない弱点や不十分な点もある。

 とはいえ、まずは国の責任を認めた司法判断が下されたことは画期的である。石綿疾患に苦しみながら一審、二審の戦いを経て、8年有余の長期にわたる闘争を耐え抜き、最終的に国の責任を認めさせるに至った原告の粘り強い不屈の闘志に心からの敬意を表し、ともに喜びたい。

 提訴以来すでに14人の原告が亡くなっている。判決によって国の責任は確定したが、亡くなった被害者も、受けた健康被害も元には戻らない。国はこの判決を真摯に受け止め、一刻も早く被害者救済に向けて全力を尽くすべきである。

以上

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