東京保険医協会 介護報酬改定説明会アピール 「道理のない今次介護報酬改定に強く抗議する」

公開日 2015年03月26日

2015年3月26日

厚生労働大臣    塩崎 恭久 殿
老健局老人保健課長 迫井 正深 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名
地域医療部長 森本 玄始

 

 今次介護報酬改定は、介護職員処遇改善加算などを差し引くとマイナス4.48%という過去例を見ない改定率となった。各報酬でみても病院・診療所が行う訪問看護費以外のサービスは軒並み引き下げとなっている。特に各種「加算」の算定ができない事業所や、「事業所同一居住者」「同一建物」「送迎なし」などの各種「減算」の直撃を受ける事業所は、事業継続はもとより、事業所そのものの存続さえ不可能になる恐れがある。

 今回の引き下げでは、財務省が6%のマイナスを要求して、「介護事業所の収益差」や「特別養護 老人ホームの内部留保」など、マスコミを利用した恣意的な情報を意図的に流した。特に後者では、施設建設への国庫補助金等が、施設の減価償却と併せて「国庫補助金等特別積立金取崩額」として、毎年、収入に計上されていることを、あたかも現金収入のごとく“見せかけの収支差”として発表したことは言語道断である。

 労働団体が発表した調査でも、約9割もの介護施設が2交代勤務を余儀なくされており、あらためて過酷な労働環境が示されている。2015年4月から特養の新規入所は原則要介護3以上になり、これまで以上に重度者が集中する。2015年8月からは利用料2割への引き上げも予定されている。今後どれほどの事業者が閉鎖・撤退に追いやられるのか、またどれほどの利用者が経済的負担を理由にサービスを断念せざるを得なくなるのか、今回のマイナス改定には怒りを覚えずにはいられない。

 さらに、リハビリテーションは「生活機能の維持・向上を目指すもの」と運営基準の基本方針に規定され、訪問リハでは「社会参加支援」、通所リハには「生活行為向上」などの加算が新設された。これは「心身機能の維持・回復」「活動」「参加」などにむけて「改善」が見込めるリハビリテーションを評価する一方で、心身機能の維持・回復には至らないものの、「拘縮」「疼痛緩和」などのために行うリハビリテーションを軽視するものといわざるを得ない。「改善」が見込めなくとも、患者の苦痛を軽減し、より良く生きたいという願いに応える。それが私たちの望む介護制度である。

 2015年4月からは段階的に要支援者の訪問・通所介護が新しい総合事業へ移行させられる。これまで、リハビリテーションに代表されるように医療保険から介護保険へ強引な給付調整が行われてきた。今度は「軽度」者の訪問・通所介護を介護保険の給付からも外して「無資格者」や「ボランティア」による自治体ごとの“多様なサービス”へと放り出そうとしている。主に要支援者に対する各種サービスを提供してきたのは中小規模の事業所である。今回の介護予防通所介護の報酬切り下げ(要支援1:▲22.1%、要支援2:▲20.3%)は、そうした中小事業所を淘汰するとともに、新総合事業への移行をさらに推進するのが狙いだ。

 国はいわゆる“2025年問題”を口実に、高齢者が住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けるためとして、地域包括ケアシステムの構築をうたっている。しかしこれは、自己責任と住民同士の助け合いを口実に、公的な医療・介護サービスから患者・利用者を切り捨てる政策である。そもそも“自助・共助”は街づくりにとっては大切なことだが、社会保障のかわりにはなり得ない。利用者の生活と権利、そして事業者・介護従事者を守るためにも国の責任で医療・介護の必要なサービスを確保させなければならない。そのために、わたしたちは、介護報酬の引き上げ、介護保険制度の改善・拡充に向けて、住民や自治体とともに声を上げていこうではありませんか。

以上

東京保険医協会 介護報酬改定説明会アピール 「道理のない今次介護報酬改定に強く抗議する」[PDF:132KB]