東京保険医協会 第93回定時総会決議

公開日 2016年03月26日

2016年3月26日
東京保険医協会

 私たちは国民の生命と医療を守る医師として、国民が等しく健康で文化的な生活を享受することを願う。しかしいま、この願いに背く動きが絶えない。消費増税が議論される中、今次診療報酬改定はマイナス1.44%と推測される。しかも算定要件が複雑で、利用されにくい点数があるために、マイナス幅はさらに大きい可能性がつよい。

 消費税増税と企業減税は、常にセットで行われてきたが、一部大企業のために国民の家計を圧迫し、医療機関には損税問題を与えている。繰り返し行われる労働規制の緩和は、2,000万人を超える非正規労働者、あるいは無職者を生み出して、貧富の格差を拡大している。日本を国際企業に開放するTPPは国家の主権を奪い、医薬品の高価格化、保険外診療の拡大、医療の営利産業化などから、国民皆保険体制の無力化を招くことが懸念されている。

 2015年に閣議決定された「骨太の方針2015」を具体化する「改革工程表」では、大幅な国民負担増と給付削減により、社会保障費の毎年3,000~5,000億円削減を開始した。病床を圧縮する地域医療構想は医療者へ過重労働をもたらし、深刻な医療崩壊を招く恐れがある。また地域包括ケアシステムには実体がなく、紙面上の連携にすぎず、患者を医療難民化、介護難民化させ、孤立死を増加させる。

 「米国とともに戦争する国」をめざす安倍政権は、集団的自衛権を唱え、特定秘密保護法を強行採決、秘密主義の国家安全保障会議を設置した。その一方ではマイナンバーカードを使って、広範な個人情報を収集し、医療情報までも紐付けしようとしている。政府は福島原発事故の後も住民の被災を省みず、核公害を引き起こす恐れのある原発の、再稼働や輸出をめざしている。また、米軍による事故と犯罪にさらされ、国内最悪の貧困に苦しむ沖縄県民の願いに背き、米軍の新基地建設計画を強行している。

 わたしたち東京保険医協会は、以下の項目の実現を要求する。

一、社会保障の財源は、行き過ぎた法人税減税の是正など負担能力に応じた税に求め、消費税増税は中止して、また、生活必需品や医療には「ゼロ税率」を適用すること

一、社会保障費を毎年削減する方針を見直し、安全・安心な医療を保障するために診療報酬の引き上げを行うこと

一、地域医療構想による無謀な病床削減は行わず、病院勤務者の過重労働による医療崩壊を避けること。地域包括ケアシステムは在宅療養者を孤立させないように計画すること

一、国保の都道府県単位化は中止し、必要な公費を投入して新たな患者窓口負担増は行わないこと。18歳未満者の窓口負担はただちに廃止し、東日本大震災被災者の医療・介護保険料と一部負担金・利用料を軽減すること

一、TPPに参加しないこと。また、「国家戦略特区」構想等の規制緩和による混合診療拡大、医療の営利産業化は行わないこと

一、原発は再稼働を止め、廃止して輸出せず、再生可能エネルギーの開発を促進すること

一、沖縄県民の総意に従い、米軍新基地建設をやめ、普天間基地は無条件返還とすること

一、日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重と平和主義を守り、安保関連法、特定秘密保護法、マイナンバー法を廃止すること

以上

東京保険医協会 第93回定時総会決議[PDF:119KB]

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