通院・在宅精神療法の算定制限――抗精神病薬の多剤投与で50%減算

公開日 2016年11月25日

医療の評価を処方内容で変える  「暴挙としか言いようがない」 

精神科懇談会2016

 「点数改定の都度、精神科の診療報酬が改悪されている」―これが精神科を標榜する医師の実感だ。

 今次改定でも ①精神科病床数の2割相当分の削減が要件とされた「地域移行機能強化病棟入院料」の新設、②精神科デイ・ケア等での長期患者の算定制限、③3種類以上の抗精神病薬等を処方した場合の通院・在宅精神療法の5割減算等が実施された。精神科病床を削減しながら、受け皿である精神科デイ・ケアの長期患者を制限し、処方内容で精神医療全体の評価を変えてしまうなど、矛盾と不合理に満ちた改定内容である。

 10月16日に開催した精神科会員懇談会には13人が参加したが、今次改定に対する憤りと不満、改善を求める切実な声が相次いだ。

精神科会員懇談会を開催

 話題提供した岩田 俊 副会長は、「精神科領域の診療報酬改定からみる医療改悪の到達段階」と題して「長期入院患者の地域生活移行」「自殺者数の低減」「発達過程の精神的不健康さへの精神医療」「高齢期発達不全としての認知症の援助」「嗜好性疾患への取り組み」の5つの課題について報告した。

 「今次改定では一定の点数化が図られたが、一部の施設を除いて実行することは難しく、国が本気で問題の解決に取り組もうとしているかは疑問」だと語った。さらに抗精神病薬を3種類以上処方した場合、原則「通院・在宅精神療法」を50%減算し、「精神科継続外来支援・指導料」は算定できない規定になったことについて、「処方内容で精神医療のあり方全体の評価を変えるというやり方は暴挙としか言いようがない」と厳しく批判した。

 現在、向精神薬多剤投与を行った医療機関は、4月、7月、10月、1月に前月までの3カ月間の投与状況を厚生局に報告しなければならないが、懇談ではこの問題について意見が出された。ある医療機関からは、「この報告が事務的に大変大きな負担になっており、強い疑問を感じている」との発言があった他、別の参加者からは「事実上全く報告が不可能な状況だ」との声も出た。
 まだ新規開業医を対称にする個別指導を受けていないという医療機関からは、「初診時に30分に満たず通院精神療法を算定せず初診料のみを算定する患者について、再診時、通院精神療法を算定していいのか。算定用件が複雑で行政指導が心配だ」と不安の声が出された。また、「予約料の徴収」について質問が出され、「心理検査は診療報酬が低いので、心理検査のときのみ予約料をとっている」との声もあった。

 「1日に何度も来院し執拗に診察を求める患者に対し、どう対応するか」との質問に、「毎回医師が対応することは困難なので、受付の担当者を決め別室に連れて行ってもらって対応している」と答えるなど、参加者同士で意見の交換が活発に行われた。
 協会では、各科別の会員懇談会を今後も開催していく予定だ。

(『東京保険医新聞』2016年11月25日号掲載)