新春の寿ぎを申し上げます

公開日 2017年01月05日

鶴田幸男会長

 2017年を迎えるにあたり、ごあいさつ申し上げます。2016年4月から東京保険医協会会長を引き受け、会員の皆さまとともに様々な活動に取り組んできました。

 2016年7月の参議院選挙後には、舛添前都知事が辞任し、小池百合子新都知事が誕生しました。「豊洲移転」や「五輪会場の見直し」がワイドショーを賑わせていますが、地方自治体の果たすべき役割は「住民福祉の増進」であります。協会は医療・介護・福祉の拡充を求め、都福祉保健局、都議会各会派と懇談を進めてきました。

 都民の生活は厳しさを増しており、経済的な理由で受診を躊躇する患者さんが増えてきているとの実感があります。都民が安心して医療・介護にアクセスできない状況は「都民ファースト」の観点から大問題です。医療現場の実態を突きつけ、東京都に対して粘り強く要請を続けてまいります。

 国政においては、怒りを通り越し背筋が寒くなるような「患者負担増計画」が実行されようとしています。患者さんに寄り添い、日々診療に励んでいるわれわれの思いを踏みにじるような制度改悪が続いています。国民が将来に希望を持てない現状で、果たしてこれからの国民医療はどうなるのでしょうか。先生方には患者負担増の中止を求める「FAX会員署名」にご協力いただいておりますが、新年から患者署名をスタートさせ、負担増計画の断念を政府に迫るとともに、国会議員への働きかけを強めてまいります。

 南スーダン自衛隊派兵、改憲論議、原発再稼働、TPP、年金カット、カジノ解禁など、現政権の暴走は目に余るものがあります。「強行採決」に次ぐ「強行採決」は議会制民主主義を踏みにじるものあり、政治劣化の象徴でありましょう。

 一方、最高裁は厚木基地騒音訴訟において、住民による自衛隊機飛行差し止め請求を棄却し、辺野古埋め立て訴訟では、沖縄県の敗訴が確定しました。司法権の独立はないと指摘されるなど、個人の尊厳や住民の権利がやすやすと踏みにじられる現状に忸怩たる思いがあります。

 解散総選挙の可能性が指摘されていますが、野党勢力は政府・与党に対して明確な対立軸を打ち出せているでしょうか。「政治を変えたい」と立ち上がっている市民や多くの有権者の期待に応える豊かで具体的な政策の構築を期待します。

 足立区の柳原病院で外科医師が準強制わいせつ罪の疑いで逮捕・起訴され、105日間の長期にわたり不当勾留されました。このようなことがまかり通れば、医療現場に混乱と萎縮を招き、正当な診療行為を行うことが困難になります。協会は、保険医の生活と人権を守る観点から、不当勾留に対して断固抗議を行い、2016年12月7日に保釈を勝ち取ることができました。多くの保険医が自分の問題として立ち上がった成果だと確信しています。

 東京保険医協会は過去最高の会員数5,480人を更新しました。全国には10万人を超える保険医協会・医会の仲間たちがいます。今こそ小異を捨てて大同につき、この現状を打破したいと考えます。協会は医師会とも連携しながら、医療界における灯台として「ダメなものはダメ」、「良いものは良い」と誰に臆することなく発信を続けてまいります。

 社会保障を前進させ、未来を生きる人々へバトンをつないでいくために奮闘することをお誓い申し上げまして、年頭のごあいさつとさせていただきます。

東京保険医協会 会長
鶴田 幸男
(『東京保険医新聞』2017年1月5・15日合併号掲載)