2015年度も風しんに関する区市町村包括補助事業の継続と男性も含めた制度拡充を求めます

公開日 2015年02月13日

2015年2月13日

東京都知事 舛添 要一 殿
東京都福祉保健局長 梶原 洋 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名
地域医療部長 森本 玄始

 

2012年から2013年にかけて風しんの大規模な流行を受け、東京都ではいち早く都内区市町村が実施する成人への風しん予防接種(MRを含む)経費を補助する緊急対策を打ち出し、今日まで継続してきました。残念ながら「妊娠している女性の夫」(旧・区分B)については、2013年9月末で東京都としての事業は終了したものの、その後も多くの区市町村が独自財政により「男性」についても助成を継続しています。2013年度中には11万人1) を越える男女が予防接種助成事業を利用しており、その意義は大変大きいものであったと考えます。

過去、国の予防接種行政の不備により、結果として2014年4月1日時点で35歳以上の男性と、52歳以上の女性には定期接種による風しん予防接種の機会がなく2)、先の流行も患者の7割以上は男性でうち20~40代がおよそ8割を占めた3) ことはご存知の通りです。さらに、墨田区が独自に行った調査では、抗体検査を受けた区民のうち、特に女性では25~29歳の43%、男性では30~34歳の32%もの割合で十分な抗体価を有していなかったことが報告されています4)。当協会はかねてより20~40代の全ての成人男女に風しんの予防接種を実施することが重要であり、女性のみを対象にした予防接種では風しんの流行を防げない、ひいてはCRSの発生を防げないことは過去の例を見ても明らであると考えているところです。

風しん報告者数そのものは少なくなっているものの、今回の流行によりCRS児の報告は45例にまで増え、うち16例が東京都内の子どもたちです5)。国は2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」までに麻疹風疹を日本から根絶するとしている一方、2014年1月には海外からの帰国者を中心に麻しんの突発的な感染が広がり、文京区の日本医科大学付属病院では院内感染により病棟閉鎖に追い込まれたことは記憶に新しいところです。今後、海外からの渡航者がかつてない規模で増加することが見込まれるなか、とりわけ開催地である東京では、これまで以上に定期接種(Ⅰ期・Ⅱ期)の接種率向上、未接種者への任意接種拡充に取り組むとともに、成人男女に対するMRワクチン接種助成事業を継続することで、社会全体で風しん・麻しんに対する免疫を維持していくことが重要です。つきましては、ぜひ2015年度事業において下記項目の実現を求めます。

1.現行の「先天性風しん症候群発生防止対策(19歳以上)」を継続するとともに、20~40代の「男性」についても同補助事業の対象に追加してください。

2.現行の「接種機会逸失者への接種(18歳まで)」(=定期接種の機会を逸失した者に対し、接種機会を提供する場合の経費を補助)を継続してください。

以上

注釈

1) 東京保険医協会が2014年8月に実施した自治体へのFAX聞き取り調査による。なお、大田区、葛飾区、日野市、国分寺市、国立市、清瀬市、檜原村および島嶼部の数字は、回答が得られなかった等を理由に含まれていない。

2) 国立感染症研究所「職場における風しん対策ガイドライン」(2014年3月)

3) 厚生労働省ホームページ「風しんについて」(アクセス日時:2015.2.9、17:24)

4)墨田区「平成26年度 大人の風しん抗体検査と予防接種助成事業実績(4月~12月分暫定版)」(PDF)

 ―墨田区ホームページのリニューアルに伴い、以下に改編―
 →ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。平成26年度墨田区大人の風しん抗体検査と予防接種助成事業実績(実績)」(PDF)
 ※掲載元ページ 墨田区保健所「大人の風しん抗体検査と予防接種費用の助成を行っています

5) NIID国立感染症研究所「先天性風しん症候群(CRS)の報告」による(2012年から2014年10月8日までに報告のあった数)

2015年度も風しんに関する区市町村包括補助事業の継続と男性も含めた制度拡充を求めます[PDF:111KB]