高齢者の医療の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)に対する意見

公開日 2015年02月12日

2015年2月10日

東京保険医協会 政策調査部
部長 須田 昭夫

意見

今回のパブリックコメント募集にあたり示された「被保険者均等割額を減額する基準(5割軽減及び2割軽減の対象世帯に係る所得判定基準)を拡大する」という政令案は制度加入者の大半を占める低所得者にとって全く不十分です。下記の点についてさらなる保険料軽減の拡充を求めます。

① 8.5割軽減、9割軽減の基準額を拡大してください。特に困窮する制度加入者を対象として9.5割軽減、10割軽減など減免措置を拡充してください。

② 医療保険制度改革骨子(平成27年1月13日社会保障制度改革推進本部決定)に示されている後期高齢者の保険料軽減特例(予算措置)の縮小を行わないでください。

③ 所得割額の軽減を行ってください。

理由

均等割部分の軽減措置について、9割軽減および8.5割軽減のための予算は平成26年度予算ベースで合計811億円、対象者は低所得者約714万人、元被扶養者約174万人、全被保険者の74%が8.5割軽減、9割軽減の対象となっています。

医療保険部会平成26年10月15日の資料によれば、後期高齢者の所得に対する保険料の負担割合は、所得が低いほど重く、所得が高いほど軽いことが示されています。また同資料では、特例軽減を廃止し本則の負担割合に戻した場合、特例を受けていた所得層における保険料負担率は7%台から10%弱に上がる試算をしており、所得が高くなるに連れてその割合が右肩下がりになっていくことが示されました。

しかし、同じ9割軽減、8.5割軽減の対象者であっても、年金の受給額は様々であり、さらにきめ細かに段階的な軽減措置を設けると共に、9.5割軽減、10割軽減など減免措置を拡充してください。

家計調査(総務省家計調査報告(家計収支編)平成25年速報概況)では高齢無職世帯の平均的な家計収支像について、世帯主が60歳以上の無職高齢単身世帯では毎月33,645円の収支赤字、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦)の世帯では毎月57,592円の収支赤字となっていることを示しています。また同報告では、70歳以上の世帯、60~69歳の世帯での消費支出に占める食料・保険医療の割合が他の世帯に比べて高くなっていることが指摘されています。この傾向は75歳以上(後期高齢者医療制度加入者)の世帯のみに限ってもあてはまる傾向と考えられます。

②について、社会保障制度改革推進本部は後期高齢者の保険料軽減特例の見直しを含む「医療保険制度改革骨子」を策定しました。この骨子は「保険料軽減特例(予算措置)は、実施してから7年が経過する中で、後期高齢者医療制度に加入する前に被用者保険の被扶養者であった者は所得水準にかかわらず軽減特例の対象となるほか、国保での軽減割合は最大 7 割となっていることなど不公平をもたらしており、見直しが求められている。このため、後期高齢者の保険料軽減特例(予算措置)については、段階的に縮小する」としています。しかし、国民には被扶養者の均等割軽減は後期高齢者医療制度が廃止されるまでの恒久的措置と捉えられていました。実際、東京都後期高齢者広域連合の「保険医療事業計画(補正板/平成22年3月発行)」では「

被用者保険の被扶養者であった方には、これまで保険料の負担がなかったことから、激変緩和措置として、制度加入時から2年間に限り、保険料の軽減が行われていましたが、法令改正により制度廃止まで軽減措置を継続することになりました。

」と記載されています。今回、医療保険制度改革骨子における当該軽減措置に対する言及は、制度発足時~初期の国民との約束を反故にするものに他なりません。

 

(参考:平成22年3月 東京都後期高齢者医療広域連合「《後期高齢者医療制度》保健医療事業計画 補正版」

これらの状況と照らし合わせれば、これ以上の保険料値上げは許容できず、むしろ貧困化を防ぐ観点から、保険料を現行より更に軽減する必要があると考えます。

③について、東京都後期高齢者広域連合は独自に15万円以下の所得(年金収入基準168万円以下)の被保険者に対して100%軽減、20万円以下の所得(年金収入基準173万円以下)の被保険者に対して75%軽減を行っています(財源の一部は区市町村負担)。このように所得割についても累進性を高め、垂直的な公平性を高めるべきと考えます。

以上

 

高齢者の医療の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)に対する意見[PDF:158KB]