関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する意見

公開日 2015年01月16日

2015年1月16日
東京保険医協会 公害環境対策部
部長 赤羽根 巖

 
1.基準地震動について(審査書20ページ)

震源を特定せずに策定する地震動について、2000 年鳥取県西部地震および2004年北海道留萌支庁南部地震を参照して620ガルとしているが、これは、中越沖地震で基準値を大きく超えた柏崎刈羽原発の1699ガルに比べるとあまりに小さい値である。基準地震動の最大加速度は少なくとも既往最大の1700ガルにすべきである。

2.重大事故対策について(審査書365-412ページ)

放射性物質の拡散防止について、関電の対策は、格納容器上部が破損し、気体の放射能が放出した場合、それを放水砲で叩き落とすというだけにとどまる。しかし、福島第一原発では汚染水の問題が取り沙汰されている。適合性審査では、汚染水事故について検討しておらず、防止策もとられておらず、格納容器が破損した場合でも、放射能の大量の拡散を防止する策を講ずるよう要求する新規制基準に違反する(設置許可基準規則55条「工場等外への放射性物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない」)。高浜原発を稼働させるなら汚染水事故の対策、防止策を策定すべきである。

原子力規制委員会の組織理念によれば、規制委は福島第一原発事故の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために、設置されたのだから、当然適合性審査の基準に汚染水対策を盛り込むべきである。

3.原子力防災計画・避難計画について(審査書ページ,430ページ)

田中俊一委員長はこの審査書案が「安全を保証するものではない」と述べている。そうであれば、重大事故は避けられない。そのため、周辺住民の防災計画・避難計画についても審査を行い、責任をもつべきである。
兵庫県の全避難所599ヶ所の内、約3割の184ヶ所の避難所が危険区域にあることは、改正された災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法に抵触し、避難計画は違法状態である。また福井県・関西広域連合の避難計画では、避難所が土砂災害等の危険区域に設定されており、避難する住民の安全を守ることはできない。

高浜原発の避難計画は他にも、風向きが考慮されていない、スクリーニング・除染の場所が高浜原発から10キロ以内にも設定されているなど放射能が30キロ以遠に及ぶ可能性が考慮されていない、避難先に十分なスペースが確保されていない、地震や津波との複合災害が考慮されていない、ヨウ素剤の配布が不十分等々の問題がある。そしてこれをチェックするシステムがなく、審査書の中で触れていない状況に甚だ疑問が残る。

米国では、原子力防災計画の策定が許可要件に含まれており、米国原子力規制委員会による審査を受け、許可が降りなければ原発を運転することはできない。現段階の避難計画の水準では国民は運転を許すことはできない。

4.プルサーマル運転について(審査書1ページ,430ページ)

MOX燃料は様々な危険性が指摘されている。たとえば、「燃焼時の危険性が高く、不安定で取り扱いが難しい」、「制御棒の効きも悪い」、「臨界に達しやすい」危険が指摘されている。また、ウランよりも溶融点が低く、重大事故の際には燃料が溶け出すリスクが高まる。ひとたび事故が起これば、ウラン燃料に比べて放射能が高く(特にアルファ線、中性子線が著しく高い)放射性物質の拡散量が大きいため、放射能被害の汚染範囲はウラン燃料時の4倍になるとも言われている。

さらに、使い終わった使用済MOX燃料は、ウラン燃料なら数年間で冷却が済むところ、100年近くプールで冷却管理する必要がある。こうした危険性がたびたび指摘されているMOX燃料をわざわざ軽水炉に用いようとしていることは、科学的、合理的といえない。
日本国内では再処理できる目処が立っておらず、高速増殖炉も機能しない。プルサーマル機運転による使用済み核燃料の行き場もない中、プルサーマル機の運転だけ開始するというのは負の遺産だけを将来に亘って引き継ぐような無責任極まりない対応である。このように再処理システム自体破綻し危険極まりないプルサーマル機は運転を差し止めるべきである。
5.原発30キロ圏内の自治体の発言権について(審査書に記載すべき事項)

事故が起これば、被害は「立地自治体」以外の広範な地域に及ぶ。これは福島原発事故で全国民が体験していることだ。再稼働にあたっては、少なくとも30キロ圏内の自治体には「立地自治体」と同等の発言権を保障すべきである。

以上

関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する意見[PDF:172KB]