保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

今次確定申告にあたって

公開日 2001年03月05日

確定申告にもパソコンが導入され始め、申告者にとってはパソコンによる記帳が可能になった。パソコンは、現金がマイナスで表示されたり、何が経費で何が収入か判別されないなど、ただそれだけに依拠することは危険だが、入力に間違いがなければ元帳の作成や各種集計表が正確に作れるなど、上手に利用すると大変便利であり、有効である。

一方、国税庁にとってはKSKシステムによる申告者のデータ管理が可能になった。このシステムを全国に導入することによって、どこの税務署でも納税者のデータを調べることができ、また個人情報のみでなく個人が所属する組織単位での登録も可能にしている。

KSKシステムに関連して、昨年6月に政府税制調査会から出された「中期答申」は「納税者番号制度」の導入を提起している。そこには「国民の理解と協力が不可欠だ」とあるが、全国民を番号で管理しようとする国民総背番号制に1歩踏み込んでおり、個人のプライバシー保護をどう守っていけるのか具体的な説明はない。

政府はことさらに国民の理解と協力を強調するが、政府の姿勢がフェアといえるかどうかは甚だ疑問である。税務調査における税務署員の態度が1部問題になっており、調査の強要が後を断たない。また、税務署員による申告書の偽造も過去に「6件あった」との政府側の答弁もあった。

納税者の権利、国民の権利が守られる制度でない限り、国民の理解と協力を促すのは難しいと言わざるを得ない。

介護保険が2000年4月1日から施行となり、介護保険関係の確定申告も新たに始まった。介護保険の医療系と福祉系のサービスに対する課税庁の考え方の違いが税制上大きな差を生じており、確定申告のこの時期、国民にとって大きな混乱を招いていると一般紙が報道した。確定申告では納税の役割を持つ一方、払いすぎた税金を取り戻す「還付申告」の役割も大きい。医療費控除の還付は10万円を超えた分の医療費が控除されるもので、介護保険サービスにも控除の対象となるものがある。このうち医療系サービスは支払った医療費の全額が控除の対象となるが、福祉系サービスが控除の対象になるにはいくつかの条件がある。例えば特養老人ホームの短期入所だけを使えば控除の対象外だが、老人保健施設や療養型病床群施設への短期入所は控除の対象である。サービスの内容が似ていてもそこには大きな差が生じる。また、福祉系サービスでも医療系サービスが1種類でもケアプランに組み込まれていれば、福祉系サービスの分も控除の対象になる。

このように介護保険制度の混乱は確定申告の上にも及んでいる、といえる。

宮沢財務大臣は今国会の予算委員会で、国の財政難の解消のためには消費税は10%以上にする必要がある、と述べた。今年6月の参議院選挙の結果によっては消費税の税率引き上げ(15%前後)を含めた具体的な増税案が示されるのは確実である。厚生労働省にせよ国税庁にせよ、現場を知らない制度の改変はさらなる国民への負担増となることをよく認識すべきである。

東京保険医新聞2001年3月5日号より