都の医療・福祉切り捨てに抗議する

公開日 2001年04月15日

東京都の医療費助成条例の改悪と2000年度予算が3月30日に都議会本会議で可決され、成立した。これによって高齢者、障害者などの医療福祉施策は大幅に後退することになる。

老人医療費助成(マル福)は、若干の経過措置が設けられたものの、6年で全廃される。経過措置は現在64歳の人は66歳から、63歳の人は67歳から助成対象にするというものであり、現在62歳の人は国の老人医療の対象になる70歳まで、医療費助成は受けられない。この年代の高齢者は、ほとんどが国保の加入者であり、3割負担プラス薬剤別途負担を窓口で支払うことになってしまう。

また、老人福祉手当は新規を認めず、これまで受給していた人も、毎年4分の1づつ削減され、3年後には全廃される。在宅の寝たきり高齢者、入院中の患者の多くは、これで在宅や入院での療養に必要な費用を賄ってやっと支えてきたのが現状であり、これが無くなれば医療の1部負担や介護保険の利用料さえ支払えず、利用できない事態さえ生まれかねない。障害者医療費助成も65歳以上の新規を認めず、精神科の通院医療も住民税非課税の場合を除き、自己負担が導入される。

石原都知事は2月23日に行われた都議会第1回定例会での施政方針演説で、都市づくりに関して「個人の権利をいたずらに許容することなく、迅速な実行こそが優先されるべきだ」と述べ、新しい公共の概念を提起した。「東京の新しい都市づくりビジョン」「東京圏メガロポリス」構想などを打ち出した。一方で、医療福祉については、1.在宅サービスの充実2.新しいニーズへのきめ細かい対応3.サービスの利用とバランスの適正化を図るとして、重度心身障害者の24時間巡回サービス、特養ホームの経営支援、365日、24時間稼動の救急医療体制などに取り組むと述べた。

しかし、出来上がった予算はどうであっただろうか。「開発第1主義」見直しが全国的な流れとなっているなかで、東京都は依然として臨海副都心をはじめとした大型開発に巨額の予算をつぎ込んでいる。その一方で都民の声を無視し、医療福祉を大幅に後退させる予算となった。

介護保険の施行に伴って、利用者がサービスを受けようと思っても事業所が手1杯でサービスが受けられない事例や、利用料が高額になり訪問看護の回数を減らさざるを得ない事例や、介護療養型医療施設も東京都の目標1万床強に対して3000床程度しか整備されずに入所できないなど新たな困難が発生している。巨大開発型の財政支出構造に根本的なメスを入れ、都民の生活と、医療・福祉を重視する都政への転換を強く求めたい。

東京保険医新聞2001年4月15日号より