保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

健保組合一次審査の動き

公開日 2001年09月25日

―保険者機能の強化を考える―

「レセプト審査 民間に開放」―9月中旬の一般紙にこうした見出しが踊った。厚生労働省の医療制度改革骨子案の内容を報道したものであった。

すでに7月に出された、小泉首相の諮問機関「総合規制改革会議」の中間取りまとめに、「保険者と医療機関の直接契約、健保組合などによるレセプトの直接審査・支払い、その業務の営利企業への委託解禁」が盛り込まれている。この動きに呼応し、日立、日本生命など17社が設立した「ライフケアパートナーズ」がレセプト審査に参入する方針であると伝えられている。

一方、健保連の下村副会長は7月の記者会見で、「2002年度改革に向けての重点の中に保険者機能の強化をあげているが、2002年実現は事実上不可能であり、数年がかりになる」としている。

これに対し、坂口厚生労働大臣は「レセプト審査は支払基金が行う方が合理的という考え方も省内にはある。改革するにしてもその時期などについては今後もう少し議論をしていかねばならない部分があると考えている」と述べている。

この「保険者機能強化」論は5年ほど前から出されているものだ。身内に甘く透明性に欠け十分な審査ができていないものに、大金を出費するのは非効率、という支払基金無用論が繰り返されてきた。

これに対し支払基金は99年4月審査分からレセプト審査を五日延長した「30日方式」を導入した。これはレセプト審査にOCR方式を導入して事務点検を省力化し、その余力を審査事務共助に振り向け、かつ審査期間を5日間延長することで支払基金の一次審査を強化したものである。審査事務共助とは、本来事務職員は直接審査を行うことはできないが、レセプト点検の中で傷病名、点数算定項目などで疑義のあるものに疑義付せんを貼付し、審査委員に効率的な審査、つまり、減点、返戻を促す。その上で、徹底的な審査済みの「品質保証レセプト」を保険者に提供しようというものである。

このような中で、全国で1年間に、資格関係誤りレセプトが585万件発生し、支払基金の審査に満足できない保険者からの再審査請求(過誤調整依頼)が1000万件以上出されている。保険者によるレセプト点検は、一部民間業者に委託されているともいわれ、診療月から一年くらい経過したものを、医学的な考慮はなされず、適応病名がなければ薬剤や検査を機械的に減点する。中には慢性肝炎の患者に強力ネオミノファーゲンシーを100ml使ったところ、保険者側では一日に100mlまで使用できることを承知しておらず減点されたというような極端な例もある。支払基金再審査部会はこのような誤った保険者の再審査請求は認めない、減点はしないという方針で行われているのだろうが、あまりの件数の多さから「減点」扱いされる場合も少なくない。

支払基金は本質的には支払側の機関ではあるが、現在まで、ともかく、公平、中立を保つ観点から、診療側、支払側、公益代表の三者構成の審査委員会での審査業務を行ってきた。この方式をやめてレセプト審査を保険者が直接行う場合、支払基金でさえブラックボックスの部分があるのに「公平、中立、公正」原則は、はたして、受け継がれるのだろうか。

現在、医療費を支払う側が直接審査を行っている例として「自賠責保険」がある。一方的な支払拒否などのトラブルが後を絶たず、苦情も多い。また直接契約に移行した場合、より安い報酬で契約する医療機関が求められ、医療機関が選別されていわゆる「蟻地獄」に陥る恐れもあり「公平、中立、公正」など望むべくもない。今、審査委員会を充分な医学的配慮のもと、血の通った審査を行う体質に改善することこそが必要である。もちろん国保も同じである。総合規制改革会議の方針はこれに逆行するものであり、こうした方針の撤回を強く望むものである。

東京保険医新聞2001年9月15日号より