保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

「試案」医療機関と患者に痛み強要 反対の大きな世論を早急に

公開日 2001年11月15日

小泉首相流の「構造改革」を具体化した、厚労省発表の「医療保険制度改革試案」に対する広汎な国民的批判が高まりつつある。

政府は、「聖域なき構造改革」の風を背景に、「三方一両損で痛みを分かち合ってもらう」とさかんに宣伝し始めている。患者も大きな負担増になるのだから、医療機関も「痛みを受けろ」という論法である。

その中味は医療機関と患者のみに大きな負担を強いるものとなっている。2002年度予算要求で、医療費分について国庫負担の当然増5500億円に対し、2800億円しか認めていない。財務省流の財政的見地からのみの論法で、やみくもに患者と医療機関に「痛み」を押し付けるだけで、国庫負担は大幅に削減というのが実状ではないだろうか。

患者の「痛み」は、耐えられないはど大きなものになっている。本人3割負担、70歳~74歳の2割負担、75歳以上の完全1割負担の影響は、大幅な受診抑制、疾病・障害の重症化となってあらわれ、却って将来的には国民医療水準の低下を来たし、財政負担増となるのではないだろうか。

特に、在宅医療では、現行1600円の負担が9640円と約6倍もの負担になる例がある。重度障害者に対する、いわゆるハイテク在宅では、さらに負担が大きい。介護保険では利用料が障害になって、必要な介護が提供できない状況が広がっているが、この中で行われる医療の負担増の影響は甚大であろう。

また、試案では、医療機関側の「痛み」と称して、「老人医療費の伸び率管理制度」が挙げられている。他に、診療報酬の見直し(包括払いの拡大)、療養病床・一般病床の六カ月以上入院患者の入院基本料の特定療養費化等も提案されている。2002年度改定の診療報酬は、マイナス改定と報道されている。しかし、診療報酬は単に「医療側の取り分」ということではなく、社会保険で受けられる内容を「医療の質」で決定するものである。低い点数での包括払いは、診療内容の低下を招きかねないし、6カ月以上入院の保険外しも、患者が入院を続けられないという結果を招く。結局は患者に「痛み」を押し付け、現行医療水準の低下を招来することになるのは明らかだ。

国民にも実態を遍く知ってもらわなければいけない。医療費が膨張を続けて財政が大変だとマスコミが宣伝している。しかし、GDP対比の医療費は、OECD諸国の中で、5位。医療保険の財政悪化も、国庫負担の削減によるものだ。医療保険改悪の内容を、多くの国民に知らせ、反対の世論を巻き起こすことが、今こそ重要になっている。

保険医協会では、日本医師会をはじめとして、多くの医療関係者と同様に医師・患者署名を集め、国会議員及び諸団体へ要請を行っている。医療保険制度改革の着地点が見えず、混迷を極める中では、反対の声をより強め、たえず影響を与えていくことが必要だ。そのための強い国民的世論をつくっていこうではありませんか!

東京保険医新聞2001年11月15日号より