保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

患者負担増で医療費を減らせるのか

公開日 2002年02月05日

超高齢社会に備え持続可能な公的医療保険制度を構築するという大儀のためといって、政府は度重なる患者負担増を繰り返してきた。そしてついに、患者負担原則3三割という公的医療保障制度を有する諸外国には顆を見ない高負担を提案している。

しかし、患者負担を増やしても国民総医療費は増え続けており、患者負担増という手法は医療費抑制に有効な手立てではない。以下にその理由を述べる。健保本人2割負担、薬剤別途負担を導入した1997年をその基準にその後の医療費の推移を見る。総医療費の増加は、97年4553億円、98年7590億円、99年1兆1009億円、2000年1兆2373億円と加速度的である。その内訳を見ると、入院外医療費は微増であるが、入院医療費が医療費全体の増加を牽引していることがわかる。2001年の入院外医療費を97年と比較すると、1件あたりの日数は5・3%減、1件あたりの医療費は4.7%と減少している。つまり、患者負担増という手法は、外来医療費削減に有効であるが、入院医療費を抑制する効果は少ないといえる。

次に、患者負担増が入院医療費を押し上げ、ひいては医療費の急増を招いているかどうかを検討する。レセプト1件あたりの医療費分析のデータによれば、上位1%未満のレセプトは25%、上位10%で61%、下位75%で26%の医療費を占める。さらに玖珂中央病院吉岡氏の分析によれば、医療費のほぼ3分の2を占める上位10%ははとんどが入院レセプトである。さらに氏は、上位1%未満のいわゆる高額レセプトに分類されるレセプトも、その半数は40~50万円に分布していて、入院医療のレベルから見れば、さほど高額ではないことを指摘した。つまり、受診抑制で外来医療管理が不充分な結果、入院医療を受ける患者が増えれば、いとも簡単に医療費が跳ね上がることは、上記のデータより明らかである。1997年以降の加速度的医療費増加は、患者負担増による受診抑制による外来医療費抑制、入院医療費増が一因である可能性が高い。たしかに健保本人については1997年以降、外来、入院医療費とも減少傾向にあるが、その対極にある国保は入院医療費が増加しており、定年やリストラで被用者保険から国保へのかなりの人口移動があり、健保本人負担増により健保本人の外来医療費だけではなく入院医療費も減少したとは結論付けられない。

今年10月から高齢者には実質上限なしの1割負担が予定されている。これが実施されると、入院外医療としては比較的高点数の在宅医療で頑張っている高齢者を入院もしくは施設入所へ押し戻す結果となりはしないか、これも結果的には医療費増を招く。

政府があくまでも受益者負担に固執し、患者負担増の政策を取り続ける限り、低医療費で済む外来医療から多くの国民を遠ざけ、入院医療費の比率が高まる結果、総医療費は増えつづける。そして医療費のほとんどが、入院医療を受けるごく一部の患者に使われるという状態になった時、国民皆保険制度は崩壊の危機にさらされる。

東京保険医新聞2002年2月5日号より