保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

実質、青天井の老人外来負担額

公開日 2002年02月25日

医療保険改革のひとつとして、老人患者の外来自己負担を大幅に増額する健康保険法等改定案が国会に上程されようとしている。案では定額制は廃止され、完全1割定率負担となるが、自己負担限度額が二転三転している。最新の案では高額所得者(夫婦2人世帯で年収630万円、単身世帯で年収380万円以上・高齢者の12%が該当)が4万200円、一般(住民税課税世帯・高齢者の58%が該当)で1万2000円、低所得者(住民税非課税世帯・高齢者の30%が該当)で8000円とされている。

この負担上限は高額療養費と同じ仕組みで、償還払いとなる。つまり、窓口でいったん1割分の負担金を支払い、後で保険者に手続きをして限度額を超えた金額を払い戻してもらうというものである。

この案は現在の負担限度額(定額・800円限度で月4回まで、定率・200床以上の病院5000円限度、その他3000円限度)自体が引き上げられ、負担増のため受診抑制が懸念されるだけではなく、いくつかの問題点をはらんでいる。

第一には、窓口で、いったん、1割分を支払わなくてはならないから、老人のみの世帯で収入が月額数万円の国民年金だけのような場合には、大変、過酷な取り扱いになる。重症で診療内容が多岐にわたることが予想される場合は、ある程度のお金の準備が必要になる。いくらかかるかわからず、お金が心配だからと受診を躊躇したり、止めてしまう患者が出てくるであろう。結局、早期発見早期治療が阻害されてしまうということである。これでは患者が重症化してかえって医療費は高くなる。

第二には、現在の老人外来平均点数が1カ月あたり1800点(全国の病院・診療所平均)程度であり、平均的な治療を受けた患者の負担金は1割で1800円で、この負担限度額に達しない。一般の患者(住民税課税で高額所得者を除く)で1万2000円限度の恩恵を受ける人は少数だと思われる。たとえば、在宅末期医療総合診療料あるいは在宅酸素療法指導管理料を算定しているなどの重症の在宅患者、日帰り手術を受けた患者など、ごく一部の限られた患者しか上限に達する例はなさそうである。多くの患者には「絵に描いた餅」にすぎない。実質、自己負担金は1割負担の「青天井」といえる。

第三の問題は償還払いである。多くの患者は払い戻される額が高額であれば、保険者に手続きすることは厭わないだろう。しかし、償還される額がわずか数百円、数十円の場合はわざわざ手間、ひまかけて償還の手続きをするだろうか。給付が受けられるのにそれを放棄してしまう心配もある。国や保険者側では償還すべき金額が手許に、僅かでも残れば支出が減って「ちりも積もれば山となる」と歓迎するかもしれないが、不当利得ともいえるものであり、とんでもない話である。償還払いは、やめて現物給付にすペきである。

政府は、いかにも低所得者に十分な配慮をしているかのように見せかけているが、負担限度が適用される場合は少なく殆どが完全に1割負担となる。高齢者が懐具合を心配せずに早期受診ができるように、現行制度の存続を強く求めるものである。

東京保険医新聞2002年2月25日号より