保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

子どもたちの未来を考える

公開日 2002年05月15日

数年前、デンマークの学校教育を視察し、全校自転車マラソンを知る。この行事は順位を競うのではなく、教師がペースメーカーとして走り、生徒はそれを参考に自分の判断で力の配分して完走を目指すというのだ。子どもが「それぞれの生き方がある」ことを学ぶという意味で感銘を受けた。

保育園を運営して毎日のように子どもたち(とくに乳児)と接すると、診察室で見るときと違い、一人ひとりがそれぞれに日々成長発達していく様子がつぶさに分る。そして子どもたちの個性とそのエネルギーの大きさを知る。マニュアル育児で思い悩むお母さんには見せてあげたい場面である。子どもたちが大きくなるほどに、このエネルギーは何処へ消えてしまうのだろうか?

今の学校現場や不登校や心身症の一部、非行・ツッパリの子どもたちを思うと、「子どもの問題行動は、勇気がくじかれることによって起こる」(星一郎)と「日本の子どもたちの低い自己評価」を考える。

世界6都市の子どもへのアンケート(第5回国際教育シンポジウム報告書)で、「勉強のできる子」「友だちから人気のある子」「正直な子」「親切な子」「よく働く子」「勇気のある子」の項目について、それぞれに「とても当てはまる」を選ばせると、日本の子どもはすべての項目で「とてもよくあてはまる」をもっとも低く回答した。

自己評価が低く、将来に夢を持てない子どもが増えていくことの深刻さは、学校完全週5日制で「学力が低下する」と危惧するようなレベルではない。

さて合計特殊出生率は、1.34(1999年)となってから現在もあまり回復していない。2050年には今の約半分67万人の年間出生数が推計され、第1次ベビーブームの260万人に比べたら4分の1である。子どもが少なくなることは、子育ての難しさの反映でもあろう。こんな時こそ、乳幼児医療費無料化の完全実施や小児救急体制の整備など小児医療を拡充し、また必要とする人は誰もが保育所に入れるようにし、女性が働きやすくし、育児と仕事の両立を援助しなければならない。

子どもたちの未来に関わる子どもたち自身の目標の決めにくさは、自己評価の低さと参考になるべき大人たちの生活の危うさ、生きがいのなさに影響されていないか。高度成長期・バブル期に働きバチにされ、今は終身雇用制の崩壊やリストラで夢破れた大人たち。その姿から子どもたちはモラトリアムヘ走る。

これからは学生と勤労者を行き来できる「複線化した教育制度」や職業訓練施設の充実、NPOやベンチャー企業などへの支援など、生きがいを追求でき、いつでもやり直しのきく社会システムをつくる。そんな努力をする大人たちを見てこそ、子どもたちは自分たちの未来を切り拓いていくのではないだろうか。

東京保険医新聞2002年5月5日・15日号より