保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

日本の活力を削ぐ健保法等「改正」案

公開日 2002年06月05日

健康保険法等改正案が厚生労働委員会(衆院)で審議されている。

有事関連3法案や個人情報保護法案等々多くの重要法案を抱え、さらに、政治家の数々の疑惑により、野党側の抵抗も強く、厚生労働委員会ばかりか国会での審議全体が遅々として進んでいなかった。5月29日、委員会審議が再開されたものの、重要法案の審議時間は、30~40時間を必要とするため、健康保険法等改正案の見通しは依然不明だ。

しかし、6月19日の会期末までに強行採決や会期延長により、同法案が成立させられるとすれば、1兆円以上といわれる国民への負担増によって、受診抑制とそれによる健康悪化・疾病の重症化を引き起こすとともに、医療費を高騰させ、保険財政悪化、患者負担増、保険料引き上げという悪循環をも招きかねない。また、97年の橋本内閣が健保改悪で、当時上向きかけた景気を落ち込ませた教訓からも明らかなように、デフレ経済下にあって、なおも消費の拡大が見込みのない現況では、国民の将来不安を煽り、消費を落ち込ませ、不況をいっそう深刻化させることは必至であろう。

小泉構造改革があらゆる分野で推し進めようとする市場原理の導入は、所得層の2極化が進むことを示唆している。これは低所得層の増大であり、一部の富裕者への富の偏在である。4千万人以上の無保険者が存在する米国を例にとって見れば、5%の富裕層が総資産の50%を持つような状況である。

WHOによると、日本の健康達成度の総合評価は1位、健康寿命も1位となっている。このように日本の医療は国際的に見ても高い評価を得ており、しかも、これは、OECD加盟国中(対GDP比)18位という低い医療費で達成しているものだ。医療や福祉に市場原理を導入するなど、アメリカのやり方を見習う必要は全くなく、先進諸国と比べても高くない日本の医療費を更に抑制し、国民に更なる不安を与える政策を打ち出すべきではないことは明かだ。

協会では、今次診療報酬改定による影響調査を実施している。この調査への回答が着々と寄せられ、調査を始めて約2週間で、256医療機関から回答を得ている。収入の対前年比では、全標榜科の平均ではマイナス7.6%と医療機関の存亡に関わる打撃的な影響が示された。内科はマイナス6.0%、整形外科はマイナス16.3%、眼科はマイナス7.2%、耳鼻咽喉科はマイナス13.0%となるなど、厚労省のいう公称2.7%よりもはるかに大きいマイナスとなっている。

「働く意欲をなくすような改定はやめてはしい」-今次診療報酬改定調査での要望事項に添えられていた会員のこの言葉は、今回の改定がどんなにひどい改定であったかを最も象徴するものだ。

所得の低下とあわせて、意欲の低下が最も懸念されるこの状態が、医療界のみならず、我国全体に及びつつある。健保法改定においても、「三方一両損」「低所得者にも配慮した」とカッコよく宣伝されているが、この健保法改定を成立させることは、日本経済だけでなく社会全体の意欲を低下させ、わが国の活力を減退させる引きがねにもなりかねない。

このような閉塞感を打破するためには、有事関連3法案等による軍拡路線、ナショナリズムなどを鼓舞しようとするのではなく、国民の暮らしと平和を最優先する政策を打ち出すことこそが必要だ。日本を元気にする材料は、健保法や有事関連3法案を廃案にすることから始まるのである。

東京保険医新聞2002年6月5日号より