主病名記載通知の撤回を「記載せずとも罰則なし」

公開日 2002年07月25日

初の診療報酬マイナス改定に苦慮している医療機関に、追い討ちをかけるように舞い込んだ一片の医療課長通知に、多くの医師たちは憤りを覚えた。

3月25日付けの主病名記載通知は、地区医師会を通じて3月末に伝達された。主病名の定義に関する疑問が噴出し、「主病名は原則としてひとつ」という内容に、医師たちは混乱した。高齢者は複数の慢性、難治性疾患を有するという医学的常識を無視した通知内容であったからである。厚労省に対して、主病名の定義を質問しても、元々医学的定義など存在しないから回答できるはずもなく、結局は医師の判断で選択することと居直られた。

また、この課長通知は、政府の行政手続きのルールから逸脱したものであったことも看過できない。この課長通知から遅れること4日目の3月29日に、総合規制改革会議が作成した「規制改革推準3カ年計画」が閣議決定された。医療課長は閣議決定を待たずに、「主病名の情報は医療の標準化の基礎となる(中略)包括払い・定額払い制度に質するところが大きい」という「規制改革推挙3カ年計画」の内容を先取りして、主病名の情報収集のために通知を出してしまったことになる。閣議決定を待たずに、一課長が実行ボタンを押してしまった手続きの違法性を指摘しておきたい。

そして5月21日、この通知には、医療界から寄せられる苦情、様々な問題点の指摘もあり、「(主・副傷病名の区分記載がなくても)ただちに返戻することは、当分の間、差し控える」という通知が追加された。

協会は、疾患別の診療報酬包括払い(日本版DRG・PPS)の布石である、とこの重病名記載通知の撤回を要請している。しかし、通常一度出された通知が撤回されることはほとんどない。主病名記載に対するペナルティが取り除かれた今、一人ひとりの医師が自主的に主病名を記載しないという行動で、通知の実質骨抜きを図る必要があるのではなかろうか。

東京保険医新聞2002年7月25日号より