保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

全医師が団結して日本の医療制度を守ろう

公開日 2002年09月15日

4月の診療報酬改定による影響の調査結果が出た。健康保険制度発足以来、初のマイナス改定の上に、深刻化する不況による受診抑制が重くのしかかった結果となった。

日医総研のデータによれば、総点数で3.86%、総件数2.13%、総日数3.81%のマイナスになった。当然、診療所、中小病院が軒並みマイナスだが、大病院のみ外来医療費がわずかにプラスになった。これは大病院中心の医療がさらに加速するという今後を予兆するともいえる。医療経営がきびしい診療所や中小病院には、大病院が高度先進医療費で健保財源を食い潰すという不満や批判もあり、対する大病院には、他の先進国に比し、日本の外来医療費や外来患者数の突出を指摘し、国民の強い健康志向に乗って診療所や中小病院が、自然治癒傾向の強いかぜなどの治療や代替医療に医療費を使いすぎるとの反論もある。各診療科による互いの批判もある。厳しいといっても、開業医収支差は月200万円もあり(もっともこれは借入金の返済、設備投資資金を含むからサラリーマンの月給とは異なるが)、病院勤務医の月給よりはずっとましだという、医師間の確執も無いとはいえない。このように小さくなったパイの取り合いで、医師が分断されようとしている。これまでの診療報酬改定のゼロサムゲームはいつしか、医師の心理的分断、そしてそれを利用した公的医療保障の財源の縮小へと誘導される。

さらに今後は、ナショナルミニマム診療の上に自費診療が上乗せされ、公費プラス自費負担の2段階医療が導入されようとしている。そうなれば、病と貧困は表裏一体で、支払能力のない階層に深刻な病が多いのに、私的保険に加入していないため、適切な医療ができないといった「選別」を医師は担わされるだろう。

そもそも、30兆円の国民総医療費は高すぎるのか?パチンコ産業30兆円、葬式産業15兆円(鈴木厚氏『川崎市立川崎病院地域医療部長』資料による)と比較してみてどうか?超高齢社会を目前に医療費高騰による医療費亡国論が喧伝されているが、再考が必要ではないか。1991年(平成3年)に、かの岡本保険局長が2000年(平成12年)の総医療費は43兆円と答弁し、実際より14兆円も誤差があった。旧厚生省は1997年(平成9年)に2025年の医療費が141兆円と推計したが、今年の推計では、1997年推計より60兆円少ない81兆円と訂正され、「60兆円もサバを読むのはペテンではないか」水一秀樹議員が追求した。医療費高騰で国民を怯えさせ、何が何でも医療費を圧縮しようとする政府の意図が読み取れる。

日本社会は、諸外国に比べ比較的安心・安全社会といわれるが、その安心の一翼を国民皆保険制度と豊富な医療資源が担っている。わが国の医療制度が、ローコストとアクセスの良さで世界一の平均寿命を達成し、WHOから高く評価されていることは周知の事実である。これが国民には知らされず、「医療費は高く、医療のレベルは最低だ」と思い込んでいる国民も多い。

わが国の医療制度が崩壊の危機に立たされている現在、早急に国民の誤解を解く必要がある。医師は今こそ団結して国民とともに危機に瀕んている公的国民皆保険制度を守っていかなければならならない。

東京保険医新聞2002年9月15日号より