公開日 2002年12月25日
米国の利己主義、独善が露骨になり、大分鼻についてきた。昨年9月の同時テロ以降、アフガニスタンからいつのまにか攻撃目標はイラクになってしまっている。しかも国連での米国の姿勢を見ていると、他国の考えや立場はお構いなしで、傲慢としか思えない。
温暖化防止策に対する姿勢と併せ評価すると、米国の本質が透けてくる。東西冷戦が終了したことは実に喜ばしい限りだが、余りにも一方的勝利だった弊害かもしれない。超大国の傲慢さは、日本へストレートに影響するから一層甚大な問題である。ことはイージス艦の派遣だけではない。
一方、国内に目を転ずれば、この1年の小泉政権の政策は目を覆うばかりである。彼の掲げる「改革」は殆ど進んでいない、というより、何も改革できないことが明らかになってきた。象徴的なのが、高速道路公団改革の委員会案に対する国土交通大臣の拒否である。真に改革する意志があるなら、その態度を問題にし、先の外相の如く罷免するくらいの気概を示すべきであった。しかし、実は何もできないのが実情であろう。一連の経過をみていると、委員会の案を棚上げする密約が既に、出来上がっているとしか思えない。
小泉内閣は時代の閉塞感が生んだ一種の徒花であり、変人といえども所詮、自民党政治の延長である。政権が安泰と感じられれば、たちまち各派閥及び官僚の利権主義は抑え難く台頭する。首相ひとり息巻いたところで効果の程は最初から知れている。
今年、医療界は激変であった。「医療特区構想」では、「株式会社の参入」が繰り返し俎上に上がった。これも米国からの強い圧力があると言われている。今回は、何とか見送りになったが、今後も十分な注意が必要であろう。但し、何故この要求が繰り返されるのか、単に一方的に反対するだけでなく、本質に戻ってわれわれも考察する必要があろう。
4月の診療報酬のマイナス改定、そして10月からの健保法改定の実施は医療機関にかつてない大きな影響を及ぼしている。特に「外総診」の廃止は、内科医を中心に影響が大きい。今後、「廃業」に追い込まれる医療機関も出てきそうである。朝礼暮改的政策ではなく、もっと長期ビジョンを据えた上での、長いスパンの改定を望みたい。そういう意味では、「医療特区構想」も併せ、21世紀の日本の医療・福祉体制をどう再構築するのか、改めて根本に立ち返っての議論が不可欠である。
この様な情勢・環境のなか、協会が果たすべき役割はますます大きくなっている。今年1年を振り返ってみると、必ずしも力量にみあう運動を十分に展開できたとは言えないかもしれない。
反省すべきところは反省し、今後も一層実績を積み重ねて保険医協会ここにあり、と自他共に認めるような知名度と実力を培う必要がある。来年の最大の課題であろう。
東京保険医新聞2002年12月25日号より