保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

4野党の「凍結法案」について

公開日 2003年03月15日

昨年6月に衆院厚労委で強行採決されて以来、私たちは反対運動を続けていたが、越年してから一気に緊迫した状況になった。野党4党が一致して「健康保険法改正案(棟結法案)」を2月12日に提出し、4師会も共同声明を発表、同12日を闘争日として読売新聞全面広告や街頭宣伝を行うなど奮闘している。マスコミでも連日「3割負担」の攻防が取り上げられるようになり、世論も高揚し始めている。しかし、マスコミの報道を見ると「3割負担」が国民のために議論され、報道されているのではなく、あくまで政争の異として取り上げられている事は由々しきことである。

協会を含め医療団体は決して自己利益のために訴えているのではない。受診抑制が国民の健康悪化、疾病の重症化をもたらし、結果として医療費が高騰し医療側も患者側も不利益を被る事を憂慮して訴えているのである。また、健保法の改正は、3割負担は健保本人だけではなく、家族の入院も3割負担となり、家計に重くのしかかる。万一、ケガや病気を患ったときに高い負担金の支払いが必要となれば、いざというときのために消費を抑制し貯蓄に走ることは当然のことである。早期発見・治療が総医療費の節約に役立つことはOECDヘルスデータ総医療費18位(対GDP比)やWHOワールドヘルスレポート健康達成度総合評価一位の評価を見ても一目瞭然である。この結果をよく踏まえた議論をすべきだ。

医療団体からの3割負担反対の声は、「診療報酬が下がったことに加え、負担増が及ぼす受診抑制によって医療機関の収入が減少するからだ」という、とかく世論に受け入れられやすい「キャンペーン」とされ、マスコミに取り上げられている。未だに全国紙では、「族政治に加担する野党の愚(毎日新聞)」、「議論の蒸し返しより改革を急げ(読売新聞)」と主張しているが、地方紙では、「3割負担上げる根拠を説明せよ(琉球新聞)」「3割負担が改革ではない(神戸新聞)」と、見解の変化が見え始めている。運動で、マスコミの論調、議員の態度も変わりつつある。

変化したのは地方紙だけではない。体を張って昨年6月の強行採決に加担した大仁田厚議員(自民)は、母親のひと言であっさりと3割負担に反対を表明し、180度態度を変えて頭を下げた。これをどのようにとらえるかは意見が分かれるところだが、少なくとも3割負担が及ぼす影響の大きさを理解し、それに対してきちんとけじめをつけたことだけは評価できる。

小泉政権のように国民のためではなく、或る種の信念に基づいて改革を押しつけるばかりでは、国民の不安・不満は増すばかりだ。97年の健保本人2割への負担引き上げが与えた影響は、厚労省の患者調査(01年3月)でも受診抑制が明確に現れている。97年の外来患者数(35~64歳)は 96年に比べて12・4%も減少している。

これ以上国民の不安・不満が大きくなる前に政策の方向転換を図るべきであり、その第一歩が3割負担の凍結である。これは決して不可能なことではなく、前例としてペイオフ延期や財政構造改革法の凍結がある。3割負担凍結に必要な国庫負担は400億円で、02年度補正予算で積み増した公共事業費1兆5000億円に比べればはんのわずかな額で予算枠内での調整は十分可能だ。3割負担をなんとしても凍結すべく、協会としても強く訴えていく決意である。

東京保険医新聞2003年3月15日号より