保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

国民の受療権を損なう患者負担の引き上げ

公開日 2003年06月25日

1961年国民皆保険達成以後、一部負担については紆余曲折を経て、ついには健保本人○割を実現していた。しかしながら、1984年10月の健保法改定により健保本人の1割負担が導入された。さらに1997年9月の改定では、2割負担と薬剤1部負担金制度が導入された。ただし、1984年の健保法改定で、将来的には国保も健保本人と同じ「2割」として給付率を統一することが明言(健保法付則第63条)されていたことは注目に値する。

ところが2002年7月、議論も尽くされないまま騒然たる雰囲気の中、野党の反対も押し切られ、老人の定率負担と健保の3割負担を定めた改定健保法案が強行採決された。「2割統一」の原則はこの時点で完全に反古とされた。強行採決の経過を含め、同法に対する国民的批判を背景に、協会も同法の凍結を強く訴え続けた。しかし、野党の提出した凍結法案は店晒しのまま廃案とされ、ついに本年4月、3割負担実施突入となった。わが国の医療保険はこうしてまた一歩後退した。

だが、われわれはこれらの改悪を甘受する立場は取らない。野党四党は「2割に戻せ」法案を国会に提出している。国会の内と外からの世論の力で、この後退を押し戻すことに引き続き取り組んでいかなければならない。

一方、少子高齢化はさらに進み、6月10日に閣議決定された「平成14年高齢社会白書」によれば、2002年10月1日現在の65歳以上人口は2363人、すなわち高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は18.5%に達した。高齢者医療費が大きいことを考えると今後ますます医療費の財源がきびしくなることは間違いない。本年春には高齢者医療制度改革論議がさかんであった。前期高齢者の負担増などの提案もなされ、今後も社会保障は後退されようとしている。

しかしながら財源不足を一部負担金によって賄おうとする考え方は根本的におかしい。医療保険における一部負担金は、受療者のモラルハザードを抑制する意味ならば、それは最小限に設定すればよいのであり、反対に受益者負担の性格を強めていくことは、病者すなわち弱者に一層の苦痛を強いることになり、さらには受療権剥奪という非人道的な結果をもたらすことになる。社会保障の精神に真っ向から対立するものである。

今回協会は3割負担実施による影響を会員アンケートにより調査した。4月診療分において著しい受診抑制が生じたことは既に弊紙6月15日号で紹介した通りである。すなわち受益者負担を強めた結果、受療権が損なわれたことがまさしく証明された。

財源は、所得格差の度合いを数値化した(※)ジニ係数の最小化・所得再分配を目的とする群方式、およびリスクプーリングを目的とする保険原理の両者によって確保することを考えるべきであり、しかも両者のバランスを適切に保つことが重要であろう。

誰もが弱者になる可能性を秘めている今日、「国は社会保障の充実に努めなければならない」という憲法25条の精神にたちかえり、公的責任を明確にすることこそが社会保障の本質ではないだろうか。

※ジ二係数=所得分布の不平等度を示す数値のこと。完全平等の時は○となり、不平等虔が増すにつれて1に近づく。

東京保険医新聞2003年6月25日号より