保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

インフルエンザ流行期を迎え差し迫ったSARS対策

公開日 2003年10月15日


SARSに就いては、過去当紙でも取り上げてはいるが、インフルエンザ流行シーズンを間近に控え、再度問題点を整理をしたい。ポイントは三点。

  1.     SARSに終息宣言は出たが、絶滅宣言ではない。再流行もあり得る。
  2.     患者は隔離が絶対必要、(疑わしきは、接触回避せよ)。開業医は診るな。
  3.     初期段階ではインフルエンザとの鑑別は不能。インフルエンザを予防せよ。

1.に就いては、各方面から今冬の再流行の可能性が指摘されており、最近もNHKが特集を組み(遺伝子レベルの変異が多い由)、一般紙朝刊では関連記事が紹介されている。

現実の問題として、再燃第1号患者が日本から出るとは思えない。が、海外旅行者が多いため、何処で患者が出ても、直ちに国内に伝播する確立は高い。前回の流行時に国内に出なかったのは、単なる幸運に過ぎない。しかも、社会は「喉元過ぎれば…」の様相を呈し始め海外旅行者は増加しつつある。少なくとも今年は幾ら神経質になってもなり過ぎる事はない。

2.は、疑い例も含め完全隔離という事である。観念的には問題があるが、SARSは実際には大規模災害と捕らえるべきである。1人を救うために新たに数人の患者を発生させては、意味がない。大規模災害時の「トリアージ」的概念を導入し、「個々を救う」発想ではなく、マスとしての効率を最優先せざるを得ない。そういう意味で、「開業医はSARS患者を診るな」という主張も許されると思う。

なお、開発された迅速判定キットは、患者・国にとっては朗報(空港等での検疫に威力を発揮)であっても、開業医にとっては殆ど意味が無い。これを使って患者を見つけた時には、自分も含め既に数人に感染してしまった後と覚悟すべきである。

3.に就いては、当紙(9月5日号3面)に紹介されている通りである。インフルエンザとSARSが鑑別不可能な上、開業医はSARSに対応すべきでない以上、開業医が取れる手段はひとつ、インフルエンザをとにかく押さえ込むことである。その為には、可能な限り多くの患者に予防接種を受けて貰うしかない。この点に関しては、東京都もワクチンの準備を昨年に比し実質、400万本増加したそうである。ただ、それで本当に十分かどうかは不明である。

本来なら、行政は、上述の問題点を、マス・メディア等を使って積極的に国民に伝えるべきである。協会は少なくとも過去2回、都に対してその旨を強く要望して来た。が、10月9日にやっと出た新聞記事では、前述の特集・記事同様、2.の論点については全く触れていない。

国は、法律を少し変えただけで、SARSへの現実の対応は医療機関まかせである。個人経営の開業医と大学病院とを同一レベル視して、その間の絶対的差異を考慮する姿勢は見受けられない。

「官」が動かないなら「民」で対応するしか仕方が無い。我われ1人ひとりの医師が、日々の診療の中で、各々の患者に、インフルエンザ・ワクチン予防接種の重要性を説くこと、及びSARSが心配な方はまず電話相談をと啓蒙しておくことが極めて重要と思われるが、如何だろうか。

東京保険医新聞2003年10月15日号より