公開日 2017年04月14日
2017年4月8日 東京保険医協会 第1回理事会
第193回通常国会で審議されている介護保険法等改正案は、利用料の3割負担導入をはじめとした、介護保険制度そのものの改悪につながるだけでなく、社会保障における国の責任を著しく後退させるものです。
まず同法案は、社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法等30もの法律を一括改定しようとしています。とくに「共生型サービス」を設け、障害福祉制度に介護保険制度の原理を導入しようとしています。
障害者は、「障害福祉制度」に基づいてサービスを受けていますが、65歳になると「介護保険制度」が優先され、介護保険の要介護認定によって支援内容が変わり、多くの場合にはサービスの量が減り、障害に応じた支援が受けられなくなります。新たに自己負担が生じるケースもあります。これは「65歳の壁」と呼ばれて、大きな問題になっています。
「共生型サービス」が導入されれば65歳以前でも、全障害児・者に対して介護保険優先の原則が適用されることになります。また、障害者に応益負担が強制され、非課税世帯の障害者に対する利用者負担の復活につながります。
障害者へのサービスは、一人ひとりの障害の個性によって異なります、まして介護とは全く異なるものです。
本来は異質である、障害者福祉と介護保険のサービスを混同することは、サービスの提供者にとっても、公的資格の誇りを否定されることであり、責任のある業務が行えないことにもなります。福祉も介護も、有資格者の給与が低すぎて、職場から立ち去る人が後を絶ちません。今回の法改正は、従来の介護保険サービスの抑制が目的であり、今までサービスを提供していた国家資格の介護福祉士を現場から遠ざける結果になると思われます。
社会保障を過酷に削減する政治を進めながら、職員の確保が困難になったことを理由にして、社会保障の実務をまるごと圧縮しようとするのは、要介護者へのテロにも匹敵します。
さらに同法案は「『我が事・丸ごと』地域共生社会」の実現を目指していますが、国が責任を持つべき社会保障・社会福祉が、「我が事」として国民に押し付けられ、地域住民「丸ごと」の“互助”に委ねる社会にされようとしています。その狙いは、「自助・互助」を中心とした安上がりな福祉サービスの普及によって、社会保障費を削減することです。
今後、障害福祉サービス、介護サービス、精神疾患・がん・難病の介護、保育、生活困窮者自立支援などが、まるごと民間によって提供されることになれば、各種サービスの質が低下することは明らかです。
現場の実態を無視した乱暴な制度破壊は、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法第25条)を侵害し、社会保障における国の責任を放棄するものであり、到底容認することはできません。「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」(介護保険法等改正案)の廃案を強く求めます。
以上
170414【理事会声明】介護保険法等改正案の廃案を求める声明[PDF:84KB]