理事会声明「診療報酬改定の中医協答申にあたって」

公開日 2018年02月12日

【理事会声明】診療報酬改定の中医協答申にあたって

2018年2月10日 東京保険医協会 第11回理事会

 2018年2月7日、中央社会保険医療協議会(中医協)は2018年度の改定診療報酬を答申した。改定率は本体0.55%アップと発表されたが、薬価等引き下げ分1.74%との合計では、マイナス1.19%となる。2014年度改定以来、医療費は実質的に3回連続のマイナス改定だ。医療機関の経営を支える原資となる初・再診料等の基本診療料はまたも据え置かれた。たび重なるマイナス改定、人件費の上昇、消費税増税などによって医療機関は経営困難に陥っており、国民に安心・安全な医療を提供するには極めて不十分な改定だ。

以下、早急に改善すべき問題点を列挙する。

「かかりつけ医機能」格差を設ける加算は廃止を

「かかりつけ医機能を有する医療機関を評価する」として、地域包括診療加算や地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所・病院に限る)等を届け出た医療機関の初診料に、機能強化加算が新設されたが、「かかりつけ医」とは、各地域において患者・家族が主体的に選択するものであり、診療報酬において規定されるべきものではない。地域医療の第一線を担っている保険医の診療技術に格差を設ける加算は廃止し、初・再診料などの基本的な診療点数の大幅な引き上げこそ実施すべきだ。

複雑すぎる在宅点数の簡素化が必要

 併設する介護施設等へ訪問診療を行った場合の評価が引き下げられたが、そもそも、戸建と共同住宅、建物内の患者数によって算定点数が異なることに合理性が認められない。在宅医療を推進するならば、複雑難解な在宅点数は簡素化すべきだ。

広範囲なオンライン診療の保険収載は拙速

 われわれは情報通信機器をすでに診療に利用しており、その役割はますます大きくなると考えている。今次改定ではスマートフォン通信などを利用したオンライン診療が採用される。中医協では、個人情報の保護、通信の安全性、緊急時に対応する責任などの審議が十分に尽くされていない。また、ガイドラインがいまだに示されていないにも係らず、10もの管理料等を算定している患者が対象とされている。このように、医療の質と安全性が担保されていない状況で広範囲なオンライン診療の保険収載をしたことは、拙速と言わざるを得ない。

リハビリテーションの介護保険移行化に反対する

 そもそもリハビリは医療行為である。要介護者等への維持期リハビリは、2019年3月末まで再度延長されたが、患者の病態に応じ、細やかに対応するためにも、維持期を含めたリハビリは、すべて医療保険から給付されるべきである。

入院基本料の大幅な引き上げが必要

 最新の医療経済実態調査によれば、一般病院の半数以上で損益率がマイナス(赤字)となるなど、病院経営は破綻している。今次改定では、病床削減ありきの入院基本料の再編と、要件の厳格化が計画されている。しかし、現行の入院基本料では医学管理や看護等に対する評価が不十分であり、人件費・設備費・施設費を改めて保障しなければならない。入院基本料の大幅な引き上げが必要である。   

以上、われわれは不合理な診療報酬の改善と、基本診療料の引き上げを求めるとともに、地域の住民が安心して受診できるように、患者負担の大幅な軽減を求めるものである。

【理事会声明】2018年診療報酬改定の中医協答申にあたって[PDF:143KB]