【勤務医だより】「医師の働き方改革」のために

公開日 2018年04月20日

 東京保険医協会理事・勤務医委員会委員長 細田 悟

細田悟勤務医委員長

「医師の働き方改革」が論じられるようになった。そのことは良いことだが、医療界がまとまらない。全国医師ユニオンが実施した勤務医労働実態調査2017で、「『働き方改革』で医師労働は改善すると思うか」の問いに「ほとんど改善しない」が58.1%で、理由は「必要な診療体制を維持できないから」や「医療現場では法律は守られないと思うから」などと回答している。

医師の過労死の問題を解決するためには、まず「勤務医」の働き方を改革することが重要である。勤務医過労死裁判事例では、勤務医が労働者であることは繰り返し司法で明らかにされてきた。ならば、勤務医は労働基準法の基で働くのが正論であり、わかりやすい。

勤務医の労働実態に労基法を当てはめて、必要な勤務医数を推計することは、容易なことである。

家族も自分のライフワークも投げ捨てて地域の医療に全人生を捧げるスーパードクターが美徳と言う文化は、医師も国民も捨て去るべきである。現在、女性医師の割合は60代が8.1%、一方20代は38.8%と年々増加しており、女性としてのライフワーク、結婚・出産・育児が普通にできるような職場にすることが、医師全体の労働環境の改善につながる。

限られた財源の中で議論するから病院管理者と勤務医の利益相反が起こるのであり、先に述べたように労働基準法の基で必要な勤務医医師数を推計し、それに見合った診療報酬を確保するのが正論であろう。そして、勤務医の働き方が改善することにより、開業医・医学研究者など他の種別の働き方も自ずと改革されていくであろう。

(『東京保険医新聞』2018年4月15日号掲載)