【談話】「働き方改革関連法」は現代の奴隷制度

公開日 2018年08月01日

2018年7月5日​

「働き方改革関連法」は現代の奴隷制度

東京保険医協会 政策調査部長 須田 昭夫

働き方改革関連法(働きかた法)が6月29日参議院本会議で強行採決されました。その柱である高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)は、すべての労働時間規制を取り払うものであり、「残業代ゼロ制度」、「現代の奴隷制度」といわれ、過労死を促進させることを、各界から厳しく批判されています。

法律には時間外労働の上限規制があると言われますが、形だけです。その実態は、24時間働かせ放題が可能です。過労死ラインを超えた時間外労働が合法化されれば、労働基準法は骨抜きになり、労働者は命の危険に晒され、労働環境が歯止めなく悪化します。

働きかた法の「出発点」とされた労働時間の調査データは、国会審議を通じて異常値や捏造が次々と明らかにされました。2割ものデータが削除されましたが、政府は「再集計しても法案の位置づけは変わらない」(6/19)と強弁し、法案ありきの姿勢が明らかでした。法案提出理由の「労働者ニーズ」も捏造でした。法案作成後に、わずか12名の意見聴取が書き加えられただけで、立法の根拠を「あと付け」にした、でっちあげでした。過労死遺族に面会すらせず、強行採決に踏み切った安倍首相の態度には、疑問を感じます。

医師の夫を過労死で失った「東京過労死を考える家族の会代表」中原のり子氏が、法案成立後の記者会見で「労働者の希望を失わせる法律が通ってしまい、憤りを持っている」と語ったことには、強い共感を覚えます。

医師の働き方をめぐっても、さまざまな議論がありますが、勤務医にも人間らしい生活が保障されるべきだと思います。人の気持ちを理解しなければならない医師に、非人間的な生活を強要することには、疑問を感じます。女性の社会進出の一部分として、医学生の30~40%が女性になりました。男性のムラ社会がつくり上げた無理偏にげんこつや、滅私奉公を強要する社会を変えなければなりません。

医師や労働者の生活設計を真剣に考えなければ、今後の医療も社会も成り立ちません。今回の、嘘で固めた悪法強行が、すべての働く人の生き方に、悪い影響を及ぼすことを許してはなりません。労働者の命と生活をないがしろにする法案の成立には、強く抗議します。

(『東京保険医新聞』2018年7月15日号掲載)