保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】消費税「損税補填」の嘘

公開日 2018年12月07日

■診療報酬による損税補填    「不足」問題が発覚

 医療機関の損税は診療報酬で補填されているというが、本当にそうだろうか。
 7月25日の中医協分科会において、消費税が8%となった2014年度の診療報酬の損税補填率に誤りがあったことが明らかとなった。これにより、病院の2014年度分の補填率は102・36%から82・9%、診療所・歯科診療所・保険薬局を含めた全体の補填率は102・07%から90・6%となった。また、新たに報告された2016年度の補填率は病院で85・0%、全体では92・5%で100%を下回り、厚労省のデータでも消費税損税は診療報酬で補填されていないことが判明した。
 これまで厚労省は、消費税率の5%から8%への引き上げによる損税分については「マクロでは概ね補填を確認した」としてきた。2014年度分の調査結果は2015年11月に公表されたが、誤ったデータのまま2016年度と2018年度の診療報酬改定が行われたことになる。しかも、2016年度データは診療報酬改定が終わった今年7月に公表された。2018年度改定前に出すことも可能であったはずで、厚労省に何か作為があったと言われてもいたし方ない。


■補填率算出への疑問

 そもそもこの調査にいかほどの信憑性があるのか。
 調査の元となったデータは、支出については医療経済実態調査のサンプル調査で改定毎に調査対象も異なる。収入については別のNDBデータ(厚労省レセプト情報・特定健診等情報データベース)等を用いており、厚労省自身も「限界」を認めている。
 しかも診療所の補填率は2014年度で106・6%、2016年度で111・2%という。一体どれだけの開業医が、この数字を実感できるだろうか。
 消費税5%までの補填分については検証不能とされているが、消費税が5%から8%へ引き上げられたとき2014年度改定時の診療報酬での補填分は、初診料12点、再診料3点とされ、厚労省は診療所において概ね補填されていると説明している。
 診療所(一般内科)の協会A会員の試算によると、2016年6月から1年間で初診2,085回25万200円、再診8,540回25万6,200円、計50万6,400円の補填額と計算された。
 保団連が本年3月に実施した消費税負担額調査の方式に従い、顧問税理士が計算した同期間の損税負担額は170万2,000円であり、その8分の3(補填分の3%)は63万8,250円である。差額は13万1,850円にものぼり補填率は、79・3%に過ぎなかった。


■「損税は補填されていない」―それが現場感覚

 2014年以降診療報酬の実質マイナス改定が続くなか、2018年改定ではネットでマイナス1・19%、本体プラス0・55%に過ぎず、消費税増税や人件費、材料費の上昇によって医療機関経営は困難を極めているのが実感であろう。
 12月に閣議決定される「2019年度税制改正大綱」で損税問題の抜本的解決に向けて結論を得るとされているにもかかわらず、厚労省は8月31日、財務省に提出した2019年度税制改正要望で損税について、「税制上の抜本的な解決に向け、個別の医療機関等の補填の過不足について、新たな措置を講ずる」と具体的な対応を示さなかった。
 診療報酬の補填では損税の抜本的解決にならないばかりか、患者負担が増えることに加え医療機関の間で補填に伴う不公平感も増幅する。補填によらず個々の医療機関の申告により還付を受ける「ゼロ税率」が最善の抜本解決策である。協会は医療への「ゼロ税率」適用実現に全力を尽くす。

(『東京保険医新聞』2018年10月15日号掲載)

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