【主張】2019年度 東京都予算を考える

公開日 2019年04月01日

歳出額は過去最大

東京都の2019年度当初予算案が都議会定例会で審議されている。一般会計歳出総額は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの準備等により、2018年度比4,150億円増の7兆4,610億円となり、過去最大となっている(これまでの最大は1992年度の7兆2314億円)。

予算規模が大きくなった理由の1つは、東京オリンピック・パラリンピック大会前の「総仕上げ」(小池百合子都知事)として、2018年度比で約1・7倍の関連経費、5330億円が計上されたことだ。

医療・福祉分野の前進面

2019年度予算において「福祉と保健」の分野には、1兆2,048億円が配分された。2018年度比552億円(4・6%)増である。高齢者福祉では、認知症グループホームの整備事業が増額され、妊娠・子育てについては、①幼児教育の無償化制度の対象外となる層に、東京都独自の負担軽減策を実施する、②不妊の検査や治療の助成対象者を拡充する、などが行われる。

また防災対策の強化として、①東京消防庁に救急隊6隊60人と救急車6台を増強、②異常気象災害や、大規模災害等に備えた「即応対処部隊(仮称)」の設置などが行われる。

依然として残る課題

一方で、依然として残された課題もある。

例えば都立病院について、地方独立行政法人化を含む経営形態の変更には、正当性がないことを明白に指摘されながら、2019年度も検討の費用が計上された。国民健康保険料については、新たな負担軽減策は盛り込まれなかった。

大型クルーズ客船のためのふ頭整備には、これまで237億円が支出されたが、2019年度も93億円の予算が計上されたほか、1メートルに1億円かかるといわれる、東京外かく環状道路や特定整備路線などの大型道路建設が、継続される。
また、小池都知事は「築地は守る」、「築地市場の跡地に食のテーマパーク機能を有する新たな市場を整備する」と発言してきた。しかし、築地の跡地について東京都は、オリンピック・パラリンピックで駐車場として活用した後、民間に貸し付けて会議場や展示場などとして再開発するという素案を示した。小池都知事も都議会では「築地再開発で東京都が改めて卸売市場を整備することはない」と述べた。このことについて「公約違反」ではないかという厳しい指摘がある。

暮らしを支える都予算を

これまで小池都知事は「東京大改革宣言」を発表し、東京都の各種審議会とその議事録、一般会計・特別会計の記録、などの公開を進めてきた。しかし、東京オリンピック・パラリンピックで4,050億円の費用を東京都と国が負担する「共同実施事業」は、大会組織委員会が発注や契約をする会議が非公開のため、都議会は「白紙委任」をさせられている状態である。

小池都知事には、東京オリンピック・パラリンピック経費を公開させて節約に努めるとともに、医療・介護・福祉をはじめとした、「都民の暮らしを支える」2019年度予算の実現に、力を尽くすことを期待したい。

(『東京保険医新聞』2019年3月15日号掲載)

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